「車は事故を起こすから撤廃すべき」という意見は正しい？公共性と現実的代替手段から考える

自動車は便利で生活に欠かせない反面、事故や環境負荷といった問題も抱えています。そのため一部には「事故が起きるなら車は撤廃すべき」と極端な意見もあります。しかし、この考え方は果たして現実的なのでしょうか。本記事では、自動車の公共性、リスク管理の考え方、現実的な代替手段について多角的に考察します。

自動車事故の実態と減少傾向

警察庁の統計によると、日本における交通事故の件数は年々減少傾向にあります。2023年の交通事故死者数は2,678人と、過去最少レベルでした。これは車両の安全性能向上や高齢者の運転免許返納、交通ルールの厳格化による成果といえます。

たとえば、自動ブレーキや車線維持支援といった運転支援システムの普及は、事故防止に大きな貢献をしており、今後も技術進化によってさらなる改善が見込まれています。

リスクがあるからといって物事を全面的に排除するのは、極端な考え方です。たとえば、階段での転倒事故や浴室での溺死も発生しますが、それだけを理由に「階段や風呂を撤去すべき」とは考えません。

重要なのは「リスクを把握し、可能な限り減らす工夫をする」ことであり、それが社会全体の発展や自由と責任のバランスにもつながります。

東京や大阪など都市部では公共交通機関が充実しており、車なしでも生活可能な環境が整っている地域もあります。しかし、地方では鉄道やバスの本数が少なく、車が生活必需品です。

特に高齢者の通院や買い物、子育て世帯の移動手段として、車がなければ日常生活が困難な地域も多いため、一律撤廃は現実的ではありません。

近年では、自動車業界も環境負荷低減に積極的に取り組んでおり、電気自動車（EV）やハイブリッド車、FCV（燃料電池車）といったエコカーが普及しています。

また、カーシェアリングやライドシェアといった新しい移動の形も浸透しつつあり、「所有から利用へ」のシフトも加速しています。

「車＝事故＝悪」という極論ではなく、「どうすれば事故を減らせるか」「どのようにより安全に使えるか」に社会が取り組むべきです。たとえば、運転教育の充実、免許制度の見直し、AI技術のさらなる活用などは有効な改善策です。

また、都市計画や交通政策の見直しによって、より歩行者や自転車中心のまちづくりを進めることも、交通安全と環境対策に寄与します。

自動車には確かにリスクがありますが、それ以上に社会や経済における重要な役割も果たしています。撤廃ではなく、改善・共存・進化という視点からのアプローチが求められます。

今後は技術と制度の両輪で、より安全で持続可能な交通社会を実現していくことが現実的で、かつ前向きな解決策といえるでしょう。