自動車部品のトレーサビリティは、品質保証や不具合追跡、リコール対応において極めて重要です。完成品Aに対して構成部品B・C・Dが異なるサプライヤーから納入され、それぞれに刻印やラベルが存在する場合、最終製品にどのように表示を集約すべきか、混同を避けるにはどうするべきか悩むケースも多いでしょう。本記事では、部品単位の刻印の取り扱いや完成品への表示方法、さらには仕様書に明記すべき内容についても実例を交えて解説します。
トレーサビリティの基本構造:部品と製品の階層管理
製品AがB・C・Dといった部品から構成されている場合、それぞれの部品には製造履歴管理のための固有刻印や2Dコードなどが付けられるのが一般的です。一方で、完成品Aにも製品単位でのトレーサビリティを担保するためのラベルや管理番号が貼付されます。
このように、トレーサビリティは製品階層ごとに構築されており、部品と完成品は明確に区別されるべきです。トレーサ情報の統合は基本的にシステム上でなされるため、物理的な表示は一貫性と視認性を保つ設計が求められます。
部品の刻印は外装に出すべきか?混同のリスクと実務判断
基本的には、部品単位の刻印は完成品の外側に見えない場所に配置するのが望ましいとされています。これは、最終顧客や現場エンジニアが完成品の管理番号と混同するリスクを避けるためです。
しかし、設計や構造上の制約から部品刻印が製品の外観に現れてしまうケースもあります。例えば構造部品や表面カバーが共用部品である場合、刻印を内面に移すことが難しいこともあります。
製品外装に部品刻印が出る場合の対応方法
どうしても部品の刻印が製品Aの外側に現れる場合は、事前に対策を講じておく必要があります。一般的には以下のような手法が取られます。
- 製品Aの仕様書・製品図面に「外装刻印は部品由来である」旨を明記
- 製品ラベルに「管理は本ラベル番号に基づく」と明記
- 出荷検査要領や受入マニュアルに記述し、ユーザー混乱を防ぐ
- 品質保証書や納入仕様書に「部品単位の刻印は製品識別には用いない」旨を記載
これにより、ユーザーや後工程担当者が誤認するリスクを下げることが可能です。
実例:仕様書での明記方法
あるTier1サプライヤーでは、以下のような文言を製品仕様書に記載しています。
※本製品の外観部に刻印されているコードは構成部品に由来するものであり、製品Aとしてのトレーサビリティは製品ラベルに記載されたIDコードを参照願います。
さらに、取扱説明書にも同様の注意書きを加え、現場での誤判別や不具合時の追跡ミスを防ぐ設計が徹底されています。
トレーサビリティ管理における設計者・品質部門の役割
こうした管理は、製品設計者・品質保証部門・工程設計者の三者連携で行うことが求められます。部品選定時点で刻印の有無・位置を確認し、必要に応じて部品メーカーと調整するなど、事前防止的な視点が重要です。
また、トレーサビリティ統合における「製品と部品の識別コードの関係」はPLMやERPシステムと連携させることで、物理的表示に依存せずに正確な履歴追跡を実現できます。
まとめ:外装の刻印はリスク要因、明示と設計でカバーを
自動車部品におけるトレーサビリティは、部品ごとに異なる刻印が存在していても、完成品では統一されたラベルに基づいて管理されるべきです。部品の刻印が製品外装に出る場合は、事前の仕様書での明示・使用上の注意記載が必須です。
ユーザーの混乱を避けるとともに、社内外での品質トラブルを防ぐためにも、刻印・ラベルの運用ルールは製品設計の段階から整理・共有しておくことが重要です。
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