近年のターボエンジン車は純正の時点で高性能化が進んでいますが、さらなる性能向上を目指して「ツインターボ化」を検討する声も少なくありません。中でも、アウディS5(B9)などのシングルターボ車をRS5仕様に近づけるために、セカンダリータービンの追加やECU書き換えによってツインターボ化するという発想があります。本記事では、その可否と実用性、リスク、コスト面について詳しく解説します。
シングルターボをツインターボにできるのか?
技術的には可能ですが、非常に難易度の高いカスタムになります。ターボシステムの増設には、単に2基目のタービンを取り付けるだけでなく、次のような大幅な改造が必要です。
- エキゾーストマニホールドの設計変更
- 吸排気系の再設計
- 冷却系(インタークーラー含む)の強化
- ECU(エンジン制御ユニット)のフルリマッピング
- 燃料系の見直し(インジェクターやポンプの容量)
つまり、ただタービンを足すだけでは成立せず、エンジン周辺機器すべてに手を入れる必要があります。
アウディS5(B9)とRS5の違いを技術的に比較
S5 B9:3.0L V6 ターボ(シングルスクロール)
RS5 B9:2.9L V6 ツインターボ(バイターボ)
排気量が小さくなるにもかかわらず、RS5の方がハイパフォーマンスなのは、ターボ構成だけでなく、ピストン形状・シリンダーブロック・クランクシャフトなど内部構造も別物であるためです。
エンジンの基本設計が異なるため、S5をRS5並みにするのは現実的には「載せ替えレベルの作業」が必要になります。
実際に行われたツインターボ化の事例とその結果
過去には、日産フェアレディZ(Z32)やスープラなどでシングル⇔ツインターボ換装が行われた事例もあります。しかしこれらは。
- もともと同系エンジンでツインターボ設定があった
- 純正部品の流用やアフターパーツが豊富に存在した
という前提があるため可能でした。
アウディの場合、欧州車特有の複雑な電子制御や排ガス規制対策があるため、単純なタービン追加ではセッティングが難航し、トラブルのリスクも高くなります。
パフォーマンス向上を狙うなら他の手法も有効
無理にツインターボ化を目指さなくても、以下のようなステージングで性能アップは十分可能です。
- ハイフロータービンへの換装
- ECUチューン(リマップ)
- キャタバックマフラー+スポーツ触媒
- 高効率インタークーラーへの交換
これらの手法で50〜100馬力程度のパワーアップは可能で、コストパフォーマンスも高いです。
費用・リスク・車検対応の現実
仮にS5を本格的にツインターボ化する場合、部品代・加工費・セッティング費用を含めて300〜500万円以上かかる可能性があります。さらに。
- 車検非対応(構造変更が必要)
- エンジン寿命の短縮
- 保証対象外・トラブル時の修理困難
長期的な維持や保険適用の面でも慎重な判断が必要です。
まとめ|S5のツインターボ化は可能だが、費用・難易度・リスクに要注意
技術的にはS5をツインターボ化することは不可能ではありませんが、エンジンの設計、車両制御、法規制、費用負担など複数のハードルがあるため、実際には現実的でないケースが多いです。もしRS5のような性能を求めるなら、エンジン載せ替えや車両買い替えを視野に入れる方が堅実かもしれません。
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