アイドリング時には冷えているのに、エンジン回転数を上げるとエアコンがぬるくなる――。そんなカーエアコンの不調には、複数の要因が絡んでいる可能性があります。この記事ではその主な原因や診断方法、修理のポイントまで詳しく解説します。
まずは基本構造をおさらい:カーエアコンの仕組み
カーエアコンは、コンプレッサー・コンデンサー・エキスパンションバルブ・エバポレーターなどの部品から構成されており、冷媒が気化と圧縮を繰り返すことで冷風を出します。
回転数に応じてコンプレッサーの圧送量が変わるため、通常は回転数が上がると冷却性能も増します。逆に回転数を上げたことで冷えが悪くなる場合は、システム内に異常がある可能性が高いといえます。
圧力数値から読み取れること:高圧・低圧の変化に注目
今回のケースでは、アイドリング時に低圧0.3/高圧1.0、回転数を上げると低圧0.45/高圧1.45という結果。低圧側の上昇が見られるため、冷媒が正常に蒸発・圧縮されていない兆候です。
この現象はエキスパンションバルブの詰まり・動作不良やコンプレッサーの劣化、または冷媒の量不足や過充填でも見られることがあります。
エキスパンションバルブが原因となるケース
エキスパンションバルブは冷媒の流量を調整する重要部品で、これが詰まると冷媒の気化がうまくいかず、冷却不良になります。特にガスに異物が混ざっていたり、長年使用していると劣化や詰まりが生じやすくなります。
エキスパンションバルブの不良は、回転数を上げたときの冷媒の循環に追いつかず、冷却性能が逆に低下することがあります。まさに本件のような症状です。
コンプレッサーや冷媒に問題がある場合
もし冷媒が不足していたり過充填だったりすると、正常な圧力が保てず冷却に支障が出ます。また、コンプレッサーのクラッチが滑っている場合や、回転数が上がった際に負荷に耐えられなくなると、エアコン性能が急落することがあります。
これらを見極めるには、サービスマニュアルで適正圧力を確認し、複数の回転域でガス圧を測定する必要があります。高圧側が極端に低い場合などはコンプレッサー不良が疑われます。
点検の進め方:DIYでは難しい部分も
点検の基本ステップは以下の通りです。
- 冷媒の量と漏れチェック(蛍光剤やリークテスターを使用)
- 圧力ゲージで高圧・低圧の変化を測定
- コンプレッサーの作動音やクラッチの動作確認
- エキスパンションバルブの詰まりやフローのチェック(整備工場で実施)
DIYで圧力確認やガス補充は可能ですが、部品単位の確認・交換は整備士の技術を要するため、症状が続く場合は早めに整備工場で点検してもらいましょう。
まとめ:回転数で変化する冷却性能は要注意のサイン
アイドリング時に冷えて、回転数を上げると冷えが悪くなる症状は、カーエアコンの異常のサインです。特にエキスパンションバルブの不良やコンプレッサーの劣化が疑われるため、圧力測定などの基本点検を行った上で、必要に応じて整備工場での診断を受けましょう。
異常を早期に発見し、適切に対処することで、暑い季節のドライブも快適に保つことができます。
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