国産スーパーカーの象徴ともいえる初代ホンダNSX。走り去る際に響くあの「クォーン」という独特の音に、心を奪われた方も多いのではないでしょうか。この記事では、その音の正体について、エンジン構造や排気システムの視点から詳しく解説します。
初代NSXのエンジン構造とその音の魅力
初代NSX(NA1/NA2型)は、3.0Lまたは3.2LのV6 VTECエンジン(C30A / C32B)を搭載しており、高回転型のエンジン特性が最大の特徴です。VTECが切り替わる6,000回転以上で、一気に音質が変化するのが魅力の一つです。
特にVTEC作動時には、吸気系とエンジン自体が発する「高周波」サウンドが響き、「クォーン」とも「フォーン」とも聞こえる共鳴音が車外にも伝わります。これはまさにエンジン本体から生まれるメカニカルサウンドの一種です。
排気音が奏でる中低音の深み
一方、NSXの排気音は、中低速域では比較的控えめながらも、高回転ではスポーティな重低音に変化します。初代NSXの排気システムは非常に丁寧に設計されており、遮音よりもサウンドチューニングを重視した仕上がりになっています。
ただし「クォーン」という高音域の音は排気音というよりは、むしろ吸気音やエンジンノイズに起因する場合がほとんどです。
吸気音の存在感と車体構造の関係
初代NSXの魅力の一つは、そのレイアウトです。ミッドシップエンジンレイアウトにより、吸気ダクトやエアインテークがドライバーのすぐ後ろに位置するため、吸気音が直接キャビンや車外に伝わりやすい構造です。
この構造が、まるで「音を操っているかのような体験」を実現させ、クルマが走り去る時の余韻として「クォーン音」が際立つ要因となっています。
実例紹介:オーナーが語るNSXのサウンド
NSXオーナーの声でも、「VTECが入る瞬間の音がたまらない」「走り去るときに残る音の余韻が気持ち良い」といった感想が多く寄せられています。
あるオーナーは、社外マフラーへ交換せず、純正状態のままでこのサウンドを楽しんでいると語っています。それだけ初代NSXの設計が、サウンド体験において完成度が高いことを物語っています。
NSXとF1の関係性もサウンドに影響
初代NSXはF1の技術がフィードバックされたモデルでもあり、アイルトン・セナの意見がシャシー開発に活かされたことでも有名です。そのような背景もあり、官能的なサウンドは「F1的」な高音域の響きを意識していたとも言われています。
エンジンのチューニングや排気系設計が、当時のレーシングスピリットと市販車の融合を目指して設計されていたことが、結果として唯一無二の音を生んだのです。
まとめ:あの音は“総合芸術”の一部
「クォーン」と響く初代NSXの走り去る音は、エンジン音・吸気音・排気音が重なり合って生まれる「総合的な音響体験」です。とりわけ高回転域での吸気共鳴とVTEC作動音が、その特徴的な高音を生み出していると考えられます。
それは単なるメカニカルな音ではなく、NSXというクルマが放つ存在感そのものであり、今なお多くのクルマ好きの心を掴んで離さない理由のひとつとなっています。
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