ブレーキの安全性を保つために欠かせないのがブレーキフルード(ブレーキ液)の定期的な交換です。多くの整備工場では「車検ごとの交換」を推奨していますが、その際に交換される範囲や、キャリパー内の液の扱いについて疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
ブレーキフルードが重要な理由
ブレーキフルードは、ブレーキペダルを踏んだ力を各ホイールに伝える油圧の媒体として機能します。しかし、この液体は空気中の水分を吸収しやすい性質があるため、時間とともに沸点が下がり、加熱時に気泡が発生しやすくなってしまいます。これを「ベーパーロック現象」と呼び、ブレーキが効かなくなる重大なリスクを伴います。
こうした理由から、2年に一度の交換が推奨されています。
交換されるブレーキフルードの範囲
通常のブレーキフルード交換作業では、マスタシリンダーから各キャリパーまでの配管を含めた全体のフルードを抜き取って、新しいフルードを充填します。キャリパーのブリーダーボルトを緩めて、エア抜きをしながら古い液を押し出していくことで、キャリパー内部の液も入れ替えられるようになっています。
つまり、キャリパー内の液も交換対象です。配管だけでなく、最も熱の影響を受ける部分だからこそ重要なのです。
「キャリパー内の液は交換されない」は誤解
ごくまれに、「配管とマスターだけ交換すればよい」と誤解されるケースがありますが、それでは不十分です。キャリパーはブレーキ時に最も高温になる部位であり、フルードの劣化が進みやすい場所でもあります。そこに古いフルードが残っていれば、ベーパーロックのリスクが高まります。
専門の整備士がブリーダーから適切に排出を行うことで、キャリパー内のフルードも含めて確実に交換されるのが正しい手順です。
DIY交換時の注意点
自分でブレーキフルードを交換する場合は、キャリパーごとのブリーダーを開放して交換を行う必要があります。ただし、エアの混入や不完全なエア抜きが原因でブレーキ性能が著しく低下するリスクがあるため、十分な知識と経験がない場合はプロに任せることをおすすめします。
また、交換時には車種ごとに指定されているブレーキフルード(DOT3、DOT4など)を使用する必要があります。
定期交換の目安とコスト
車検ごと(約2年ごと)の交換が基本ですが、年間走行距離が多い人や、山道・サーキットなどでブレーキを多用する走行をしている場合は、1年ごとの交換も検討しましょう。
交換費用の目安は、ディーラーであれば4,000〜6,000円程度、カー用品店や整備工場では3,000〜5,000円ほどが一般的です。
まとめ:キャリパー内のフルードも必ず交換しよう
ブレーキフルードの交換は、安全に直結する重要なメンテナンス作業です。キャリパー内は最も過酷な環境にさらされるため、そこを含めた完全な交換が必要不可欠です。誤った認識で部分的な交換にとどまらないよう、整備内容や作業の流れをしっかり理解しておくことが大切です。
信頼できる整備士や工場に依頼し、安全で安心なドライブを楽しんでください。
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