日本市場では韓国車を見かける機会が非常に少なく、同様に韓国でも日本車の販売が伸び悩んでいる現状があります。両国の自動車業界のこの現象には、単なる製品スペックや価格だけではない、歴史的・文化的・政治的な背景が関係しています。本記事では、日韓両国での輸入車事情とその理由を、実例を交えて解説していきます。
韓国車が日本で売れない理由
まず、日本ではヒュンダイ(HYUNDAI)や起亜(KIA)などの韓国車がほとんど流通していません。その理由の一つは、国産車の品質・信頼性が非常に高く、わざわざ海外ブランドを選ぶ必要がないと考える消費者が多いからです。
さらに、販売網やアフターサービスの不十分さも原因です。例えば、2001年に日本市場に再進出したヒュンダイは、2020年代になってようやくEV(電気自動車)で再アプローチを試みていますが、未だ市場シェアはごくわずかです。
日本車が韓国で売れない理由
一方で、韓国ではトヨタ・ホンダ・日産などの日本車も一部輸入されているものの、シェアは1〜2%程度に留まります。これは品質の問題ではなく、歴史的・政治的背景が大きな要因です。
韓国では過去の日韓関係の影響により、日本製品に対する国民感情が悪化する局面が定期的に訪れます。特に2019年の日韓貿易摩擦以降は、日本車の不買運動が活発になり、一部地域では日本車を所有していること自体に社会的な圧力を感じるという声もあります。
韓国における輸入車市場のトレンド
興味深いのは、韓国ではBMWやメルセデス・ベンツなどの欧州車が非常に人気で、輸入車市場の大半を占めています。これは「国産車とは違う高級感」や「欧州ブランドへの憧れ」が背景にあるとされています。
韓国における輸入車販売データ(2023年)によれば、BMWがシェアトップで、次いでメルセデス、アウディなどが続き、日本車はわずかにトヨタ・レクサスがランクインする程度です。
価格競争とブランドイメージの影響
韓国車は価格競争力には優れており、海外市場ではアメリカや東南アジア、ヨーロッパで高い人気を誇っています。一方、日本市場は価格よりも「ブランド信頼性」や「長年の実績」が重視されるため、単に価格が安いだけでは通用しづらい傾向があります。
日本車も韓国で一部高く評価されているものの、ブランドイメージの形成や政治的感情による制約から、本来のスペックに見合う市場浸透が進まないのが実情です。
消費者心理が購買行動に与える影響
どちらの国でも、政治的・歴史的背景が購買行動に影響を及ぼすという点が共通しています。日本人にとって韓国車は「未知」であり、韓国人にとって日本車は「意識的に避ける存在」であることが、マーケティング上の大きな壁となっています。
一方で、若い世代ではこうした固定観念が薄れつつあり、スペックやコスパで冷静に判断する傾向も見られ始めています。
まとめ|政治とマーケティングが交差する自動車市場
日韓両国で相手国の車が売れにくい背景には、品質や性能では語れない深い要因があります。国際関係、ブランドイメージ、消費者心理といった複雑な要素が重なり、単純な商品力だけでは市場を開拓できない現実が浮かび上がります。
しかし、EVやカーシェアの普及、若者の価値観の変化などにより、今後の展開には変化の兆しもあります。固定観念に縛られず、新たな選択肢として受け入れられる未来も、決して遠くないかもしれません。
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