「200万円の新車を売っても利益は数万円」と聞いて驚かれた方も多いかもしれません。実際、新車販売単体の利益率は非常に低いのが業界の実情です。それでもトヨタなどの大手自動車メーカーが世界的企業として成長を続けている理由は、その背後にある収益構造と多角的なビジネス戦略にあります。
ディーラーが抱える新車販売の利益構造
一般的に新車1台あたりのディーラー粗利益は数万円〜十数万円と言われています。これは車両本体の仕入れ価格が高く、販売価格もメーカー指定で大きな裁量がないためです。
そのため、ディーラーは単純な車両販売ではなく、付帯収益(ローン・保険・点検パック・コーティングなど)で利益を補っているのが実情です。
メーカーの利益源はどこにある?
トヨタなどの大手メーカーは、ディーラーとは違う方法で収益を上げています。以下が主な柱です。
- 世界中への大量生産・販売:スケールメリットによるコスト削減と販売台数の多さ
- サプライチェーンの内製化:部品や素材の一部を自社グループで生産
- 金融事業:トヨタファイナンスなどのローン・リース収益
- アフターサービス:純正パーツ、メンテナンス収益
- 高収益モデルの販売:レクサスなど高価格帯商品の拡充
実際の収益率はどれくらい?
トヨタ自動車の営業利益率はここ数年で10%前後と非常に高水準です。これは新車販売の利益だけでなく、金融・部品・サービスを組み合わせたトータルな企業戦略が成功しているからです。
たとえば2023年度の連結営業利益は約5.3兆円に上り、車両販売数だけでは説明できない多角的利益構造を示しています。
新車販売以外の重要な収益の例
・ローン・リース契約:自社金融会社を通じたローン契約で金利収益を得る
・メンテナンスパック:3年や5年の整備パックの販売による継続収益
・車検や修理:純正パーツ交換で部品の利益率は高め
・保険・コーティング・下取サービス:一見副次的なサービスが利益源となることも
自動車産業の未来と収益の多様化
今後の自動車業界では、電気自動車(EV)や自動運転、カーシェアリング、MaaS(Mobility as a Service)といった新領域への投資が進んでいます。
これにより車の販売そのものだけでなく、移動サービス全体から利益を得るという戦略が展開されつつあります。トヨタがソフトバンクと共同で立ち上げた「MONET Technologies」などもその一例です。
まとめ:車両販売の利益が少なくても企業は成長できる
新車販売自体の利益率は確かに低いですが、自動車メーカーはそれを補う多角的な収益モデルを構築しています。トヨタのような企業は車を「売る」だけでなく、「保有」「使う」「メンテする」「支払う」すべてのプロセスから収益を得る仕組みを作り上げています。
そのため、「200万円の新車で数万円の利益」という見方だけでは企業の強さは語れないのです。
コメント