VG20ETエンジンの片バンク圧縮ゼロの原因と対処法|フェアレディZの放置車両トラブルに学ぶ

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長期間放置された車両を購入した際、特にエンジンの圧縮不良は大きなトラブルにつながる可能性があります。今回はフェアレディZのVG20ETエンジンに見られた一方のバンクだけ圧縮ゼロという症状を通じて、原因の考察と点検ポイントを解説します。

圧縮ゼロ:何が起こっているのか?

通常、片側3気筒すべてが同時に圧縮ゼロになることは稀であり、単なるピストンリングの摩耗やバルブの焼けでは説明しきれません。圧縮が片バンクのみ全滅しているという事象は、より構造的な異常が疑われます。

例えば、VG20ETのようなV型6気筒エンジンで一方のバンクすべてに圧縮がない場合、カムシャフトが動いていないタイミングベルトのズレや破損バルブの損傷などが考えられます。

主な原因の可能性と確認方法

  • タイミングベルトやチェーンの断裂・ズレ
    VG20ETはSOHCエンジンであり、タイミングベルト駆動です。バンク片側のカムに動力が伝わっていなければ、バルブの開閉がなくなり圧縮しません。
  • ロッカーアームやバルブトレインの破損
    放置中の劣化や異物混入でロッカーアームが破損し、バルブが動かなくなることもあります。
  • ヘッドガスケット抜け
    極端に冷却水やオイルが混入している場合、ヘッドガスケット抜けで圧縮が漏れていることがあります。

まずはタイミングベルトカバーを開け、左右のカムプーリーが回転しているかをクランキングしながら確認しましょう。

エンジン圧縮測定から得られる情報の読み解き方

正常な気筒(1000kPa=約10kg/cm²)と異常な気筒(5kPa=0.05kg/cm²)の差は非常に大きく、これだけで機械的な不具合が明白です。

圧縮ゼロというのは「完全にシールされていない状態」を示しており、例えばバルブが常時開いている、バルブタイミングが大幅にズレているなど、構造的な不良が推測できます。

修理する前に確認しておきたいこと

車両が長期放置されていた場合、エンジン内部のサビや固着も考えられるため、潤滑剤を注入した後の再測定や、エンジンを開ける前にスコープなどでバルブや燃焼室の状態確認をするのが効果的です。

また、圧縮のない側のスパークプラグを外して、異常なカーボン付着やオイルまみれになっていないかをチェックすることで、内部状態の手がかりが得られます。

対処方法と修理の方向性

タイミングベルトがずれているだけであれば、正しく合わせ直せば回復の可能性があります。ただし、バルブとピストンの干渉による損傷があった場合、エンジンヘッドやピストンの修理、最悪はオーバーホールが必要になります。

一方、放置車両という特性から、ラッシュアジャスターや油圧系が機能していないこともありえるため、オイル系統の洗浄や各部の点検も同時に検討しましょう。

まとめ:圧縮ゼロは異常のサイン、焦らず順を追って診断を

VG20ETのようなV型エンジンで片バンクすべての圧縮がゼロというのは、タイミングベルトやバルブトレインなどの構造的問題が疑われます。慎重に原因を切り分け、必要な修理方針を立てることが重要です。

放置車両であることを踏まえ、エンジンオーバーホールも視野に入れつつ、部品や工賃の見積もりを進めていきましょう。

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