近年のトヨタ車には、サイドボディにシャープな“クサビ型”のプレスラインやデカールがあしらわれることが増えています。このようなデザインは、単なる見た目のアクセントではなく、ブランド戦略や空力性能の向上といった深い意図を持って採用されているケースが多くあります。本記事では、トヨタが採用するクサビ型デザインの背景と狙いについて、具体的な車種例を交えて解説します。
クサビ型デザインとは?視覚的な特徴を整理
“クサビ型デザイン”とは、車体のフロントからリアに向かって絞り込まれるような造形や、くびれを強調するような折り目・プレスラインのことを指します。特にサイドビューにおいて、リアドア周辺やフェンダーにシャープな傾斜やエッジが施される傾向が見られます。
デカールや塗装によってそれをさらに強調する車種もあり、全体のフォルムに「動的」「先進的」な印象を与えるのが特徴です。
トヨタ車におけるデザイン戦略の変化
トヨタは近年、“退屈な車を作らない”というビジョンのもと、エモーショナルなデザインへの転換を進めてきました。キーワードとなるのは「Keen Look(鋭い眼差し)」と「Under Priority(低重心)」。この2つを軸に、ボディ全体の彫りの深さや鋭角なラインが増えています。
とくにTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャ)を採用した車種では、低重心化によりサイドの“くびれ”や“張り出し”が際立ち、これがクサビ型デザインとして顕著に現れるようになっています。
具体的な車種で見るクサビ型の採用例
実際の車種で見ると、以下のようなデザインが見られます。
- プリウス(60系):フロントからリアにかけてなだらかに落ちるラインが特徴的。リアフェンダーの張り出しとシャープなキャラクターラインがクサビ型を演出。
- ヤリスクロス:ルーフからリアにかけて強い傾斜を持たせ、スポーティな印象。サイドパネルに複数の折り目が入り、視覚的な軽快感を生み出しています。
- C-HR:大胆なサイドラインとリアドア上部の抉れたような造形は、まさにクサビ型デザインの象徴的存在。
このようにトヨタの新型車では、視覚的なシャープさと空力性能の両立を図るため、戦略的にクサビ型のサイドデザインが採用されているといえます。
なぜ“くびれ”を強調するのか?空力とデザインの両面から
クサビ型のデザインには次のような意図が含まれています。
- 空気抵抗の低減:リアエンドに向けて絞り込むことで、空気の流れをスムーズにし燃費効率を高める
- ボディ剛性の向上:プレスラインを入れることでパネルの剛性が増し、走行安定性にも貢献
- 視覚的な躍動感:停まっていても動いているような“躍動感”を演出するトレンド
特にEVやハイブリッド車では空力性能が重要視されるため、外観上のくびれや絞り込みは美的表現だけでなく、実用的な機能としても取り入れられているのです。
他メーカーと比較したトヨタのデザイン傾向
ホンダや日産など他メーカーでもサイドに彫りの深いラインを採用する例は増えていますが、トヨタは特に“彫刻的なエッジ”を好む傾向があります。これは、世界市場でも印象に残るビジュアルを求めるグローバル戦略の一環ともいえます。
また、スポーティさを強調するGRシリーズや、プレミアム感を押し出すクラウンなどでは、クサビ型の強調がさらに顕著になっています。
まとめ:トヨタのクサビ型デザインは単なる流行ではなく、戦略的進化
トヨタ車に見られるクサビ型デザインは、単なる“流行”や“デザインの遊び”ではなく、空力・機能・ブランド戦略を反映した意図的な進化の一部です。視覚的なかっこよさだけでなく、走行性能や燃費にも寄与しており、今後もTNGA世代の車両を中心にこの傾向は続くと考えられます。
新型車を見る際には、「このデザインはなぜここに折り目があるのか?」といった視点を持つことで、より深くクルマの魅力を理解できるでしょう。
コメント