国産スポーツカーからヨーロッパの高級クーペまで、ドアノブを“隠す”デザインが採用されるケースが増えています。特にスポーツクーペ系では、リアドアや後席用ドアノブが見えないよう処理されていることも珍しくありません。この記事では、なぜ自動車デザイナーが“あえて”ドアノブを隠すのか、その意図とメリットについて詳しく解説していきます。
ドアノブが目立つと何が問題なのか?
ドアノブは機能的には不可欠なパーツですが、ボディラインに対して突起物であるため、視覚的にノイズになると感じるデザイナーも多いです。特にスポーツカーは「滑らかなライン」「低いフォルム」「動的造形」を重視するため、ドアノブの存在がデザイン上の妨げになることも。
たとえば、マツダRX-7(FD型)ではフロントドアノブは比較的控えめながら、リアシートのアクセス用にドアノブを廃する工夫が取られています。日産GT-RやホンダNSXなどでも、ドアノブが目立たないよう工夫されています。
空力性能とドアノブの関係
ドアノブを隠すことには、デザイン面だけでなく空力(エアロダイナミクス)の観点からもメリットがあります。風を受ける突起物を減らすことで、空気抵抗を低減し、燃費や走行安定性の向上につながるのです。
たとえば、テスラ・モデルSやジャガーFタイプでは、走行中は完全に収納され、停車時だけポップアップするドアハンドルが採用され、空力と見た目を両立しています。
リアドアノブを隠すSUV・クーペの意図とは?
スポーツクーペやコンパクトSUVでは、リアドアノブを窓枠近くに隠すスタイルがよく見られます。これは、クーペライクなシルエットを強調したいためで、たとえば次のような車種で採用されています。
- トヨタ C-HR:リアドアノブをピラー上に配置
- ホンダ ヴェゼル:初代モデルでリアノブを隠すデザイン
- アルファロメオ ジュリエッタ:リアノブがCピラーに融合
このような手法は「5ドアなのに3ドア風に見せる」トリックで、スタイリッシュさを演出する目的があります。
近年のEVに多い「フラッシュ式ハンドル」
テスラを筆頭に、近年のEV車両では「フラッシュ式」と呼ばれる、ボディと一体化するドアハンドルが採用されることが多くなっています。これはドアハンドルそのものを極力目立たなくするデザインで、空気抵抗の削減と、先進的なイメージ付けに貢献します。
たとえば。
- テスラ モデル3:押すことで飛び出すハンドル
- ランドローバー イヴォーク:スライドして出てくるハンドル
こうした技術は見た目だけでなく機能性も高く、ドアノブに対する“再定義”とも言えるトレンドです。
ドアノブを隠すことのデメリットも存在する
一方で、ドアノブを隠すデザインには次のようなデメリットも指摘されています。
- ドアの開閉が直感的でなくなる
- 冬場などでハンドルが凍結しやすい(フラッシュ式)
- コストが高く、修理も複雑になる可能性がある
そのため、実用性よりもデザイン性を重視する場合に採用されるケースが多いです。
まとめ:ドアノブを“消す”のは、機能よりも美学の追求
ドアノブを隠すのは、見た目を洗練させるためだけではなく、空力性能向上やクーペらしさの演出という“機能美”の一環とも言えます。特にスポーツカーや先進的なEVでは、このような細部の造形がブランドイメージを形作る重要な要素となっています。ドアノブの有無に注目することで、車のデザイン思想をより深く理解できるかもしれません。
コメント