ハイブリッド車を整備する際、特に注意が必要なのがブレーキフルードの交換作業です。とくに後輪のブリーダーからの排出時に「ブレーキを踏みっぱなしにする方法」と「一定のテンポで踏み抜く方法(ポンピング)」が存在するのはなぜか?と疑問に思う方も多いはず。本記事では、それぞれの方法の違いや目的、ハイブリッド車ならではの注意点について、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。
■ ハイブリッド車のブレーキシステムの特徴
ハイブリッド車のブレーキシステムは、回生ブレーキと油圧ブレーキが協調して動作する複雑な仕組みになっています。回生ブレーキによってエネルギー回収を行いながらも、フルードを使った油圧制御も必要なため、フルード交換時には通常のガソリン車とは異なる配慮が求められます。
とくにプリウスやアクア、フィットHVなどの国産ハイブリッド車は、電子制御ブレーキ(ECB)を搭載していることが多く、メンテナンス手順を誤ると重大なトラブルの原因になります。
■ 「踏みっぱなし」にする方法の目的と使い方
ブレーキペダルを踏みっぱなしにしてフルードを抜く方法は、車両側の圧力を一定に保ち、静的にフルードを押し出す目的で使用されます。主に次のような状況で使われます。
- 既にエア抜きが完了していて、残留フルードをゆっくり排出する目的
- 制御系への負担を最小限にしながら、安全に作業したいとき
この方法では、ブレーキブースターやマスターシリンダーの動作をあまり刺激せず、トラブルのリスクが低いのが利点です。
■ 一定テンポで踏む「ポンピング式」の目的と使い方
一方、一定のテンポでブレーキを踏んだり戻したりする方法(通称:ポンピング)は、エア抜き作業や、フルードを強制的に押し出したい場面で使用されます。特徴は以下の通りです。
- ホース内に混入したエアを抜くときに効果的
- ペダルの感触(ストローク)を確認しながら作業が可能
- ブレーキ圧力を断続的にかけることで排出を促進
ただし、ハイブリッド車でこの方法を行う際には、「READY」状態での実施や、整備モードの設定が必要な場合があります。作業前に整備マニュアルを必ず確認しましょう。
■ ハイブリッド車のフルード交換時の注意点
一般的な注意点として、以下のポイントが非常に重要です。
- 必ず整備モードに入れてから作業する(特にトヨタ系)
- バッテリー電源をOFFにしてから行う作業とONで行う作業を分ける
- ABSユニットに直接関わる部分には手を出さない
実際にプリウスでフルード交換を試みた際、整備モードを使用しなかったことで、警告灯が点灯しディーラーでのリセットが必要になった事例もあります。
■ 実例で理解する作業手順の違い
例えば、後輪からの排出で「踏みっぱなし」方式を用いる場合、助手がペダルを踏んだ状態でブリーダープラグを開けて静かに排出し、閉じてからペダルを離します。逆に「ポンピング」では、助手が3〜4回一定のリズムで踏み、保持した状態で排出→閉じて離す、を繰り返します。
このように、「目的」と「作業段階」によって使い分けるのが正しい方法です。
■ まとめ:作業の目的と車種に合わせた方法選びが重要
ハイブリッド車のブレーキフルード交換では、「踏みっぱなし」と「ポンピング」それぞれに意味があります。目的に応じた使い分けをしないと、エア噛みや警告灯の点灯、最悪ブレーキ不良を引き起こす恐れもあります。
作業前には必ず、車種ごとの整備書を確認し、ハイブリッド特有の制御方式に沿って作業を進めましょう。DIYで行う場合も、リスクを把握した上で、必要であればプロに相談することをおすすめします。
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