スーパーカブを競技用として使用する際、少しでも駆動系の抵抗を減らすためにジェネレーター(発電機)を外すというチューニングが一部で行われています。しかし、発電機を撤去することで発電機からの電力供給がなくなるため、点火系や電装の再構築が必要です。特に直流点火化が必須となり、その際の注意点を理解しておくことが重要です。
なぜ直流点火が必要になるのか
スーパーカブなど小排気量バイクの多くは、エンジンの回転によって発電される交流電力を使って点火しています。ジェネレーターを外してしまうとこの交流がなくなるため、点火系には安定した直流電源が必要になります。
そのため、バッテリーから電力を供給し、直流用CDI(キャパシタディスチャージイグニッション)を使用する必要があるのです。
直流点火に対応したCDIの例
現在市販されているCDIには、交流(AC)専用と直流(DC)専用があります。競技用に使用されることが多いDC-CDIの例は以下の通りです。
- POSH「スーパーバトルCDI DCタイプ」:スーパーカブ系エンジンに対応
- DAYTONA「デジタルCDI DC用」:回転リミッター調整機能あり
- KITACO「パワーレブDC-CDI」:チューンドエンジンにも安定した点火
これらは12Vバッテリーからの安定した電源が必要で、充電手段がない状態では、走行時間に限りがある点に注意が必要です。
配線での対応ポイント
CDIの交換だけでは直流点火化は完了しません。以下のような配線改造が必要です。
- バッテリーからCDIへ電源ラインを引く
- イグニッションスイッチからのACCラインの分岐
- 不要となるレギュレーターやステーターコイルの切り離し
CDIへの電源供給はヒューズを介して行い、ショート防止のためのリレーやスイッチ追加も推奨されます。また、配線図を用意して確実に分岐・絶縁することが重要です。
実例:競技カブの直流点火化カスタム
あるライダーがスーパーカブの競技仕様化に際し、ジェネレーターを完全撤去してDC-CDIとリチウムイオンバッテリー(12V2Ah)で運用していた事例があります。バッテリーの持ち時間はおよそ30分~1時間程度。使用後は必ず外部充電器でフル充電が必要でした。
点火の安定性は良好だったものの、配線のショート対策に相当注意したそうです。ギボシ端子の絶縁処理とケーブルタイでの固定がトラブル防止に大きく寄与したとのことです。
まとめ:直流点火化はメリットと注意点を理解して行うべき
ジェネレーターを外すことでエンジン負荷を軽減できるのは確かですが、それに伴う電装系の改造は高度であり、DC-CDIの選定と配線処理が成功の鍵です。
バッテリーの容量や充電タイミングの管理も含め、レース・競技車両としてのみ実施すべきカスタムです。自走する公道仕様の車両には適していないため、用途に応じて判断してください。
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