90年代から2000年代初頭にかけて流行したVIPカー文化では、排気音やスタイルに強いこだわりが見られました。中でも「中間ストレートマフラー」の採用は定番とも言える存在でしたが、その理由には見た目だけでない実用的な背景や当時のチューニング思想が反映されています。
中間ストレートマフラーとは何か?
中間ストレートとは、エキゾーストシステムの中でも中間パイプ部分に設けられているサイレンサーや膨張室を取り除き、直管構造に置き換えたカスタムのことを指します。完全な直管(リアまで全て)とは異なり、リアピース側にマフラーを残すことである程度の音量調整が可能になります。
中間だけをストレート化することで、排気効率を高めつつ、音質や音量をコントロールできる点が好まれていました。特にVIPカーのように「重低音」かつ「こもった響き」を求める層にはちょうど良いバランスでした。
なぜ当時は中間ストレートが人気だったのか
90年代のVIPカー文化は、威圧感や高級感とともに「重厚な排気音」を重要視する傾向がありました。直管では高音が強く、暴走族的な印象になりやすかったため、より「上品な低音」を狙って中間ストレートが好まれました。
実際にY33シーマやJZS151クラウンといった大型セダンのユーザーは、HKSや柿本改、フジツボなどのサイレンサー付きリアマフラーと組み合わせる形で中間ストレート化を行い、迫力あるが不快ではない音質を目指していました。
車検対応とトラブル回避の現実的な選択肢
当時の車検制度でも完全直管は通らず、警察からの取り締まりリスクも高かったため、「最低限の静音装置を残す」形として中間ストレートは実用的な落とし所だったのです。
また、保安基準適合品として売られていたマフラーの多くが中間ストレートを前提に設計されていたことも背景にあります。公道での使用を意識したカスタムスタイルが支持されていたのです。
音のチューニングとしての中間ストレート
マフラー交換といえば見た目重視と思われがちですが、VIPカーの場合は「いかに耳に心地よい音を奏でるか」も重要なテーマでした。中間ストレートによって生まれる独特の排気音の余韻や共鳴音は、当時のオーナーにとって「理想のサウンド」を構成する重要な要素でした。
例えば、セルシオのV8エンジンに中間ストレート+リアサイレンサー構成を施した車両では、迫力ある「ドロドロ系サウンド」を演出でき、仲間内でも高評価を得ていました。
現在との違いと進化
現代の車両は純正でも遮音性が高く、エンジン自体も静粛性を重視した設計が進んでいるため、同じような構成でも当時と同じ音を再現するのは難しくなっています。さらに、騒音規制も厳しくなっているため、過去のような自由なチューニングは難しくなってきています。
とはいえ、現在も当時のスタイルを踏襲したカスタムを行うオーナーは存在しており、懐かしの「中間ストレート文化」はマニア層の中で根強く残っています。
まとめ:中間ストレートは音と実用性を両立させた選択肢だった
1990〜2000年代のVIPカーにおける中間ストレートは、単なる見た目や音量だけでなく、車検対応やトラブル回避といった実用性を考慮したうえでのチューニングでした。その結果、「上品かつ迫力のある音」を実現できる方法として、多くのオーナーに支持されたのです。
直管=派手、中間ストレート=通好みという当時のチューニング思想は、今もなお多くのカスタムファンに影響を与えています。
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