かつてEV市場の先駆者であった日産は、e-POWERやGT-R、Zといった個性派商品を持ちながらも、ここ数年は「見た目先行」「中身が伴わない」との声も聞かれます。しかし、本当に日産は“根幹のモノづくり”をおろそかにしてしまったのでしょうか?本記事では、日産の近年の戦略を技術・販売・ブランドの観点からひも解き、表面的なイメージに惑わされずにその実像を探ります。
EVの先駆者からe-POWERへの転換は「逃げ」だったのか?
日産は2010年に世界初の量産EV「リーフ」を投入し、EV市場を切り開きました。しかしその後、完全EVへのリスク回避として登場したのがシリーズハイブリッド「e-POWER」です。
e-POWERはエンジンで発電しモーターで走る技術であり、走行感覚はEVに近い一方、充電設備が不要という利便性から一定の支持を得ました。実際にノートe-POWERは2018年に日本で年間販売台数1位を記録し、市場からの需要も高かったのです。
GT-RやZは“無用の長物”なのか?ブランドと技術の象徴としての役割
スポーツカーであるGT-RやZは、確かに台数ベースでの利益貢献は限定的です。しかし、これらは単なる販売モデルではなく、ブランド価値や技術力の象徴としての側面を持ちます。
たとえばGT-Rは日産のシャシー・空力・制御技術の集大成であり、その存在があるからこそ量販車のe-POWERやプロパイロットなどにも高い信頼が生まれるのです。
“中身のない最中”という批判はどこから来たのか?
日産は2010年代後半、経営混乱やリストラ、開発投資の停滞によって商品展開が鈍化。かつての躍進と比較し、「中身がない」「パッとしない」という印象が定着した背景があります。
たとえば2020年前後には新型車投入が遅れ、結果としてホンダやトヨタといった競合との差が広がった印象を与えました。しかし、実際にはその期間中もe-POWER第2世代開発やEV「アリア」の準備など、水面下では着実に再起への布石が打たれていたのです。
ZやGT-Rは“見栄え商品”か?市場のニーズとのバランス
ZやGT-Rのようなアイコン的車種は、多くの自動車メーカーが投入をためらう中で、あえて日産が造り続けることでファン層を維持し、若年層にも「クルマの夢」を語れる土壌を残しています。
確かに「売れるか売れないか」だけを指標とするなら効率は悪いかもしれません。しかし、ブランド全体の厚みや、マーケティングにおける象徴性を考えると、それらは単なる「飾り」ではなく戦略的商品だといえます。
“根幹のモノづくり”は捨てられていない。注目すべき車種たち
実は、日産は2020年以降に次々と“骨太”な商品を復活させています。例えば。
- エクストレイル:第2世代e-POWER+電動4WDで走りと燃費を両立
- セレナ:ファミリー層向けに高効率と安全性を追求
- アリア:新世代EVとしてグローバル展開を開始
これらは販売台数・機能性・環境性能など、いずれも“見栄え”だけでなく“実需”に応える設計がなされており、日産が再び“量と質”を両立しようとしている姿勢が見て取れます。
まとめ:日産は“見栄え重視”ではなく、復活に向けた再構築の途上
日産は一時的に「外見だけ」「売れないスポーツカーばかり」と揶揄された時期もありましたが、e-POWER、Z、GT-Rといった象徴的技術と、エクストレイルやセレナなどの実需対応車を両立する方向で再構築を進めています。
今はまだ変革の途中段階ですが、「中身のある最中」を再び手にする日は、そう遠くないかもしれません。
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