三菱トライトンは無骨でタフなデザインと優れた走破性で、ピックアップトラックとして国内外で高い人気を誇っています。一方、同じくラダーフレーム構造を持ち、四輪駆動性能が評価されていた名車「パジェロ」は生産終了して久しく、復活を望む声も根強くあります。では、なぜ三菱はトライトンの荷台を囲って「パジェロ」としてSUV化しないのでしょうか?本記事ではその背景を紐解いていきます。
そもそもトライトンとはどんな車なのか
トライトンはタイをはじめとするASEAN市場で主力とされているピックアップトラックで、最新モデルでは本格的なオフロード性能と先進安全装備を備えています。ラダーフレームを採用し、悪路走破性や耐久性に優れる設計です。
そのスタイリングは「スポーツユーティリティトラック(SUT)」と呼ばれることもあり、乗用と商用の中間的存在として注目されています。
パジェロとは異なる設計思想とマーケティング
一見似ているように見える両車ですが、パジェロはもともと「本格クロカン+ファミリーSUV」として設計されており、室内の快適性や乗り心地にも重きを置いていました。対してトライトンはあくまで商用性をベースにしており、積載性能や作業性が優先されます。
たとえ荷台を覆ってSUV風に改装したとしても、トライトンの乗り心地や遮音性、後部座席の快適性はパジェロの代替にはなりにくく、ブランド価値の維持という観点からも「安易な流用」は慎重に避けられていると考えられます。
商品ラインナップの最適化とコストの問題
車両の設計や生産には膨大なコストがかかります。単にトライトンの荷台を囲うだけでも、衝突安全基準の再認証、乗用車としての認可、新たな内装設計などが必要です。つまり、技術的に可能であっても商品として成立させるにはコストが見合わない可能性があります。
加えて、現在三菱はアウトランダーPHEVやエクリプスクロスなど、乗用SUVに注力しており、同一カテゴリでの競合を避けるためにも、新たなパジェロ的SUVをすぐに投入する意義は薄いという戦略判断もあるでしょう。
パジェロ復活の噂と今後の展開
一方で、三菱自動車は「パジェロブランド」を完全に放棄しているわけではなく、近年では電動化を絡めた復活の構想が噂されています。EV化やPHEV化されたパジェロが将来登場する可能性もゼロではありません。
また、他社ではピックアップベースのSUV(例:トヨタ・ハイラックスサーフなど)が存在した歴史もあり、ニッチ市場向けの戦略としてトライトンベースのSUVが企画される可能性は残されています。
ユーザー側でカスタムするという選択肢
海外では、トライトンをベースにしたキャノピー付きカスタムやフルカバータイプのカスタムSUVが流通しています。これらは市販されていないものの、専門ショップやキットを利用すればトライトンをほぼ「パジェロ風」に変えることも可能です。
日本でも規制を満たせば車検を通すことができるため、DIYやショップ依頼によって理想の姿に近づけるという道もあります。
まとめ:三菱がトライトンをパジェロ化しないのは合理的な選択
三菱がトライトンの荷台を囲って「パジェロ」として販売しない理由は、設計思想の違いやコスト、ブランド戦略の整合性によるものです。とはいえ、SUV愛好家の間では根強い期待があるのも事実であり、今後の動向には注目したいところです。
どうしてもパジェロ風を望むなら、海外パーツやカスタムによる実現が一つの現実的な手段となるでしょう。
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