ツーリング先や街中で大型バイクに乗るライダーを見かける機会は増えてきましたが、その多くは男性、特に中高年の男性であることが多いと感じる方も少なくないでしょう。とくに「高齢の女性が大型バイクに乗っている姿」は、現実としてあまり目にする機会がないのも事実です。では、なぜそのような現象が起きているのでしょうか?本記事では、その背景や理由、そして今後の可能性について解説していきます。
過去のバイク文化と女性の立ち位置
1970年代〜90年代にかけて、日本のバイク文化は基本的に「男性向け」の趣味とされていました。雑誌、CM、販売店なども男性ユーザーを中心にした構成が多く、女性がバイクに興味を持っても、免許取得や購入のハードルが高い時代でした。
そのため現在高齢層にあたる女性たちが若い頃、大型バイクに乗る機会そのものが少なかったという背景があります。つまり「若い頃に経験がない → 年を重ねてもバイクに縁がない」という自然な流れが形成されているのです。
体格・筋力的なハードルと誤解
大型バイクは車両重量が200〜300kg以上になることもあり、取り回しや立ちゴケ対策などで、一定の筋力や体格が求められるというイメージがあります。特に年齢を重ねると体力面の不安から「自分には無理かも」と感じやすくなります。
しかし近年では足つきが良いローダウンモデルや軽量な大型バイク(ミドルクラス)が増え、昔よりも高齢者や女性に優しい設計がされています。実際、身長150cm台の高齢女性ライダーがホンダのNC750やヤマハMTシリーズを乗りこなしているケースもあります。
家庭や社会的な事情も影響している
一昔前の女性は「結婚・子育て・介護」といった家庭内の役割を担うことが多く、自分の趣味や挑戦に時間と資金をかける余裕がなかったという事情もあります。
特に大型バイクは購入費用や維持費が高く、保険や整備、装備品にもコストがかかるため、生活優先で趣味に踏み出しにくいという現実的な理由が存在していました。
実際には存在する“見えにくい高齢女性ライダー”
「見たことがない」という印象は、実際に数が少ないことも原因ですが、目立ちにくいだけという側面もあります。女性高齢ライダーの多くは、グループツーリングやイベントで仲間内だけで楽しんでいることが多く、SNSに露出することも少ない傾向にあります。
また、年齢を感じさせないウェアや装備をしているため、一見して高齢者と気づかれない場合もあります。実際には70代でも元気に大型バイクでソロツーリングをしている女性もおり、決してゼロではありません。
時代は変わりつつある:女性ライダーの増加と高齢化
近年は「リターンライダー」や「大型デビュー」を果たす50代〜60代女性が増えており、教習所でも女性比率は着実に増加しています。安全装備の進化、女性向けのバイクギア、安心のABS搭載車などにより、以前よりもハードルが下がってきたのです。
YouTubeやInstagramでもシニア女性ライダーの活動が徐々に可視化されつつあり、「私もやってみたい」と思う中高年女性が増えているのは、確かな時代の変化と言えるでしょう。
まとめ:見えないだけで、確実に存在している女性ライダーたち
高齢女性ライダーが少ない理由には、文化的背景、社会的役割、体力的・経済的な要因が複合的に影響しています。しかし、それは「不可能」という意味ではありません。実際には静かに、大型バイクと向き合って人生を楽しんでいる女性も多く存在しています。
今後はライダー人口の高齢化に伴い、そうした姿がより一般的になっていくでしょう。もしあなたが大型バイクに乗る高齢女性を見たことがないとしても、それは“これから目にするチャンスが増える”ということの裏返しかもしれません。
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