日本の燃料価格には多くの税金が上乗せされており、その中でも「暫定税率」は長年にわたり議論されてきたテーマのひとつです。特にガソリンと軽油の価格差は、課税構造に大きく影響されています。では仮に、暫定税率がガソリンにだけ廃止され、軽油には維持された場合、価格はどう変化するのでしょうか?本記事ではその仕組みと価格逆転の可能性について詳しく解説します。
ガソリンと軽油の税金構造の違い
まず、ガソリンと軽油にかかる税金には以下のような違いがあります。
- ガソリン税(本則税率):28.7円/L
- 暫定税率(上乗せ分):25.1円/L
- 軽油引取税:32.1円/L(暫定税率込み)
- 消費税:各種税金を含んだ総額に対して10%
このように、現行ではガソリンには約53.8円/Lの税金(本則+暫定)に加え、さらに消費税が課税されます。一方、軽油は32.1円+消費税で、通常は軽油のほうが安くなります。
仮にガソリンの暫定税率が廃止されたら?
暫定税率が撤廃された場合、ガソリン税の合計が53.8円→28.7円に下がります。つまり、税負担だけでも25.1円安くなることになります。市場価格への影響を考慮しても、ガソリン価格が大幅に下がる可能性があります。
一方で軽油には引き続き32.1円の引取税がかかるため、ガソリンと軽油の「税額差」が逆転し、ガソリンの方が軽油より安くなる可能性が高いと考えられます。
実際の価格差と逆転の可能性
例えば、現在(税抜きで)ガソリンが150円、軽油が130円だと仮定した場合、暫定税率が撤廃されることでガソリンは約25円下がり、125円程度になります。すると軽油より安くなる構図が生まれます。
もちろん、原油価格の変動や販売業者の価格調整もあるため単純ではありませんが、税金だけを見ると価格逆転は理論上十分に起こり得る状況です。
価格逆転が起きた場合の社会的影響は?
価格が逆転すると、主に軽油を使用している運送業界や建設業界に影響が出る可能性があります。なぜなら、ディーゼル車は燃費効率の良さと軽油の安さを前提に導入されているためです。
仮にガソリンの方が安くなれば、ガソリン車の方が燃料コスト面で有利になるため、企業の車両戦略や燃料使用の見直しにつながる可能性があります。
そもそも「暫定税率」とは何か
暫定税率とは、本来時限的な措置として上乗せされた税金です。ガソリン税や軽油引取税などにおいて設定され、道路整備財源などを目的に導入されましたが、実際には半世紀以上にわたって「恒久化」されてきた側面があります。
過去には政治的に暫定税率廃止が議論されたこともありましたが、税収や公共投資との兼ね合いで廃止に至っていないのが現状です。
まとめ:ガソリンだけの暫定税率廃止で価格逆転は理論上起こりうる
ガソリンにかかる暫定税率が廃止され、軽油に現行の税率が維持された場合、ガソリンと軽油の価格は逆転する可能性が高くなります。これは税構造上のシミュレーションから見ても妥当で、実際の市場価格にも影響を与える可能性があります。
将来的にこうした税制改革が行われるかどうかは政治の動きに左右されますが、燃料価格や車選び、業界の構造にも大きな影響を及ぼす可能性がある重要なテーマといえるでしょう。
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