観光業における運転手による車両整備は違法か?離島の実態と法律上の注意点

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観光地や離島などでは、限られた人員と設備で業務を回す必要があり、運転手がツアー車両や船の整備を行う場面も見られます。しかし、こうした状況は法的に問題がないのか、利用者としても気になるところです。本記事では、運転手が自ら整備を行うことの法的な位置づけと、安全確保の観点からの注意点をわかりやすく解説します。

自動車の整備に関する法的な位置づけ

まず、自動車の整備に関連する基本法は「道路運送車両法」です。特に業務用の車両、つまり緑ナンバー(事業用自動車)白ナンバーでも旅客運送を行う自家用有償旅客運送は、整備の体制が厳しく求められます。

道路運送車両法第49条では「自動車の使用者は、保安基準に適合するよう維持しなければならない」とされています。そして、整備には国が認可した整備工場(認証工場・指定工場)での点検整備が推奨されています。

ただし、日常点検や軽微な修理(ラジエーター交換など)については、必ずしも整備士の資格がなくても違法とはなりません。しかし、それが反復・継続的に行われ、しかも旅客運送用車両である場合、安全性の観点から非常に問題です。

PTO車両や商用バンにおける運転手の整備は適法か?

例として、9人乗りのキャラバンなどを使ったツアーでは、道路運送法上の「一般乗用旅客自動車運送事業(タクシー)」または「一般貸切旅客自動車運送事業(貸切バス)」にあたる場合もあります。

これらの車両は、一定の整備管理体制(運行管理者や整備管理者の選任、記録簿の作成)を法的に求められるため、個人による整備のみで済ませている場合には、道路運送法違反の可能性も否定できません。

特に旅客を乗せた車両が、整備不良により事故を起こした場合、会社や整備実施者に重過失責任が問われることもあります。

船舶についての法的整備義務と危険性

船については「船舶安全法」「海上運送法」などが適用され、一定の大きさや用途の船舶では定期検査整備管理者の設置が義務づけられています。

船長が簡単な整備を行うこと自体は違法ではありませんが、旅客輸送船であればその整備が不十分な場合には、海難事故の重大なリスクを伴います。特にツアー目的であれば、所轄の運輸局による許可や安全検査が求められるため、運航・整備の両面において監督責任が問われる可能性があります。

行政処分や罰則の対象となる可能性

整備を資格のない者が反復継続して行い、事故や違反が発覚した場合、以下のような罰則が科されることがあります。

  • 道路運送車両法違反:30万円以下の罰金(第109条)
  • 整備不良車両の運行:行政処分(車両使用停止、営業許可取消など)
  • 整備ミスによる事故発生:刑事責任(過失致傷、業務上過失致死)

仮に整備行為自体に資格が不要でも、旅客運送や商用車両においては「体制の不備」が責任の対象になることが多いため、現場対応だけで済ませるのはリスクがあります。

まとめ:運転手による整備は違法でないが、旅客運送業務では重大なリスクを伴う

運転手自身が車や船の整備を行うこと自体は、法的に即「違法」とは言えません。ただし、旅客を乗せる事業用車両や船舶においては、安全管理や整備体制の整備が法的に求められているため、その整備が「自己判断で行われているだけ」であれば、行政処分や刑事責任のリスクを伴う行為となります。

離島や人手の少ない現場ではやむを得ない事情もありますが、安全と法令順守を両立させるためには、必要な整備記録や管理体制の構築が欠かせません。疑問があれば、管轄の運輸局や行政に相談するのも一つの選択肢です。

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