かつての国産ミニバン黎明期に登場したマツダ・カペラワゴン。その中でも異彩を放つのが、7人乗り仕様で採用された“後ろ向き3列目シート”です。今回はこのユニークなシートレイアウトについて、当時の背景や実際の使用感、現代の視点からの評価までを詳しく解説します。
マツダ・カペラの7人乗りモデルとは?
1990年代に登場したカペラワゴンには、一部グレードに3列7人乗り仕様が用意されていました。この仕様の最大の特徴は、ラゲッジスペースに展開される後ろ向きの補助シートです。
このタイプの座席は「ジャンプシート」とも呼ばれ、普段は格納されており、必要に応じて座面を引き出して使う形状になっていました。似た構造はボルボやフォードのワゴン車にも一部存在しています。
なぜ後ろ向きシートだったのか?
当時は3列シートを限られた全長の中に収めるため、後方スペースを有効活用する設計が求められていました。前向きに座席を配置するには空間と安全基準のクリアが難しく、後ろ向きシートがその解決策でした。
また、当時の法律では補助席扱いとして位置づけられ、乗車人数確保のための実用的な方法でもありました。
実際に座ってみた感想は…?
体験者の多くが語るのが、「後続車とずっと目が合う」という心理的不快感です。とくに夜間などはヘッドライトが直接差し込んできたり、長距離ではかなりのストレスに感じることも。
また、会話が前向きの座席としづらく、ドライブ中の孤立感を感じるという声もありました。ただし短時間であれば子どもにはウケが良かったという意見も散見されます。
当時の競合車と比較して
同時期に販売されていたホンダ・オルティアや日産・アベニールなどのライバル車は、基本的に5人乗りが主流で、7人乗りを用意したモデルはごく一部でした。そうした意味で、カペラの7人乗り仕様はファミリー向けワゴンとして一定の差別化に成功していたと言えます。
特に小さなお子様が多い家庭にとっては、緊急時にでも使える7人乗りという選択肢があるのは魅力だったのかもしれません。
現在の評価と懐かしさ
現在では後ろ向きシートを採用している車種はほとんど存在せず、貴重なユニーク装備のひとつとなりました。中古市場でも玉数が非常に少なく、希少性から注目されることも。
当時を知るオーナーやファンの中には「懐かしい!」「あれで遠出したなあ」と語る方も多く、その不便さも今となっては魅力のひとつと言えるでしょう。
まとめ:不思議な体験とユニークな設計に注目
マツダ・カペラの7人乗り後ろ向きシートは、現在では珍しい存在です。快適性とは少し距離があるかもしれませんが、そのユニークさと当時の設計思想を知ることで、より車の面白さを感じられるのではないでしょうか。
もし機会があれば、ぜひもう一度乗ってみて、あの「後続車と目が合う感覚」を体験してみてください。
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