1999年に登場した初代ホンダ・インサイトは、日本車として初めて本格的なハイブリッドシステムを搭載し、燃費性能を極限まで追求したモデルとして知られています。その独特なスタイリングの中でも、特に目を引くのが「リアホイールスカート」と呼ばれる後輪カバーの存在です。本記事では、そのデザインに込められた狙いや技術的背景を詳しく解説します。
空力性能を追求したボディデザイン
初代インサイトの最大の特徴は、徹底的に計算された空力性能です。Cd値(空気抵抗係数)はわずか0.25という非常に低い数値で、当時の市販車としてはトップクラスの空力性能を誇っていました。
後輪を覆う形状のホイールスカートは、この空力性能を実現するための重要なパーツです。車両側面にできる乱気流を抑え、空気の流れをスムーズに後方へと導く効果があります。
燃費改善への直接的な影響
空気抵抗は車の燃費に大きな影響を与えます。特に高速走行時には、空気抵抗が走行エネルギーの半分以上を占めることもあります。
インサイトはこの空気抵抗を減らすことで、10・15モード燃費で35.0km/Lという驚異的な数値を達成しました。後輪カバーもその一助を担っており、「見た目よりも実用性重視」の設計思想が表れています。
アルミスペースフレームと軽量化思想
初代インサイトは、ボディ構造にアルミ製スペースフレームを採用し、徹底した軽量化も実現していました。後輪のホイールカバーも軽量素材で作られており、空力と軽量の両方を両立する設計です。
また、全体的にリアホイールアーチ部分の形状もスムーズで、風の流れが引っかからないよう丁寧に処理されています。
他の車種にも見られるホイールカバーの採用例
インサイトに限らず、一部の高燃費・空力重視車両ではホイールスカートが採用されています。例としては、
- 初代ホンダ・CR-X HF(アメリカ市場)
- GM EV1(電気自動車)
- シトロエンCXなどの一部欧州車
いずれも、空気抵抗を少しでも抑えたいという狙いから後輪のデザインに工夫が見られます。
実用性と視覚的インパクトのトレードオフ
ホイールスカートは、視覚的には少し奇抜に映る場合もあり、現代の市販車ではあまり採用されていません。しかし、インサイトのようなエコカーにとっては、そうした見た目以上に、効率性が最優先されました。
また、タイヤ交換や点検の際には手間がかかるため、ユーザー目線ではデメリットもありましたが、それを上回る燃費効果が魅力とされました。
まとめ:初代インサイトのデザインは機能美の象徴
初代ホンダ・インサイトの後輪が隠されているのは、単なるデザイン上の特徴ではなく、空気抵抗の削減による燃費向上という明確な目的があったためです。
「機能のためのデザイン」が貫かれたインサイトは、今見ても先進的な一台であり、エコカーの原点ともいえる存在です。もし街で見かけたら、ぜひそのリアフェンダーにも注目してみてください。
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