なぜクルマのボディ剛性は数値化されないのか?その理由と背景を解説

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自動車の性能評価において重要な要素のひとつである「ボディ剛性」。走行安定性や静粛性、安全性などに深く関わるにもかかわらず、なぜかパンフレットやスペック表に数値として表記されることはほとんどありません。本記事では、なぜボディ剛性が明確な数値として開示されないのか、その理由と背景をわかりやすく解説します。

ボディ剛性とは?基本概念を理解しよう

ボディ剛性とは、車体がねじれたり曲がったりするのにどれだけ耐えられるかを示す性能です。大きく分けて「ねじり剛性(トーション剛性)」と「曲げ剛性」の2種類があり、それぞれが操縦安定性や乗り心地に影響を与えます。

たとえば、ねじり剛性が高いとカーブでのハンドリングがシャープになり、車体の一体感も高まります。逆に低ければ、ボディがよじれやすく走行中の不快感や異音につながることもあります。

なぜメーカーは数値を公開しないのか?

ボディ剛性は本来、シャシー設計や衝突安全性能の設計段階で測定される技術的な数値ですが、自動車メーカーが一般公開することは稀です。その理由には以下のような要素が絡みます。

  • 剛性の測定方法がメーカーごとに異なる:治具の固定方法、計測基準、荷重条件などが統一されていないため、数値だけでは正確な比較ができません。
  • 剛性の高低が必ずしも良し悪しを示さない:用途や車種によって必要とされる剛性バランスは異なり、「高ければ良い」とは限らないため。
  • 開示が競合他社への設計情報の漏洩になりうる:開示すると他メーカーの開発戦略に影響を与える可能性があるため、企業秘密として扱われやすい。

過去に剛性を数値で示した例はある?

一部のスポーツカーや高性能車では、メーカーが広報資料などで「従来比●%アップ」といった表現で剛性の向上をアピールすることがあります。

たとえば、マツダの「ロードスター」では先代比のねじり剛性が●%向上したといった記載があることも。また、BMWやメルセデス・ベンツなどのプレミアムブランドでは、特定モデルに限り曲げ剛性を数値化して説明したこともありますが、統一された単位や基準ではありません

数値よりも実走行のフィーリングが重要視される

ボディ剛性は数値で単純に評価できない複雑な要素を含んでおり、最終的な評価は走行フィールや静粛性、車両の完成度に直結します。そのため、多くのメーカーは試乗体験や専門家のインプレッションを通じて剛性の高さをアピールしています。

たとえば、「路面の継ぎ目でもフロアがしっかりしていて揺れない」といった感想は、ボディ剛性の高さを間接的に証明していると言えるでしょう。

剛性向上のために使われる技術とは?

近年では、ボディ剛性向上のためにさまざまな先進技術が導入されています。

  • 超高張力鋼板(ハイテン材)の使用
  • 構造用接着剤による接合強化
  • スポット溶接の点数増加
  • パネルの補強リブ追加

これらの取り組みによって、車体の剛性を高めつつ軽量化や安全性の両立も図られています。

まとめ:ボディ剛性は“体感する”性能である

ボディ剛性は非常に重要な性能項目ですが、数値の公開が少ないのは統一された測定基準が存在しないことや、単純な比較が難しいことに起因します。

ドライバーにとって大切なのは、スペック表の数字よりも、実際の走行時に感じる「安心感」や「しっかり感」です。購入時は試乗して、ボディ剛性の高さを自分の感覚で確かめることが、納得のいく車選びの第一歩となるでしょう。

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