「トルクレンチの目盛が合わず、規定トルクに0.2Nmほどのズレが出るけど、そのまま使ってよいのか?」という疑問は、DIYメンテ派からプロ整備士まで誰もが一度は抱える問題です。この記事では、その判断基準と対処方法を具体例付きで解説します。
🔧そもそもトルクレンチの“目盛”とは
トルクレンチは製品によって目盛の単位や精度が異なります。例えば。
- 最小目盛:0.1Nm単位(高精度)
- 最小目盛:0.5Nmや1.0Nm(中~低精度)
たとえば規定トルクが「5.2Nm」の場合、0.5Nm刻みのトルクレンチでは「5.0Nm」または「5.5Nm」でしか設定できません。この“差”が作業にどれほど影響するかが重要です。
⚠️0.2Nmのズレは許容されるのか
JIS規格(B4659)やISO6789規格では、多くの機械式トルクレンチにおいて±4%の誤差が許容範囲とされています。
つまり、5.0Nmなら±0.2Nmの誤差はほぼ公差内に収まるため、安全性・精度面での問題は基本的に生じにくいと考えられます。
🔍目的・部位による判断がカギ
高精度が求められる部位:
エンジン内部・カーボンフレームの自転車・アルミ製小ネジ等では、0.1〜0.2Nmの違いが割れや損傷につながるリスクがあります。
ある程度の誤差が許容される部位:
自動車のホイールナット(例:100Nm)、ブレーキキャリパー(例:35Nm)などでは、0.2Nm程度の誤差はほとんど実用上無視できます。
🔧どうしても不安な場合の対応策
- トルクレンチを使い分ける:5〜20Nmの範囲なら、専用の“プレセット型”や“デジタル型”を使用
- トルクレンチの校正を受ける:メーカー・工具屋で校正サービスを利用することで信頼性を担保
- “手締め+感覚”を補助として使わない:感覚に頼ると誤差はさらに拡大します
🛠️事例紹介:現場での選択判断
ある整備士は「SRAMのカーボンハンドルクランプ(推奨トルク5.2Nm)に、0.5Nm刻みのレンチでは使わず、TONEの0.1Nm単位のデジタル式に替えた」と語ります。
逆に、「自動車のM12ボルト(締付けトルク80Nm)で、±0.5Nmの誤差は誤差として気にしていない」というプロも多く存在します。
まとめ:その“0.2Nm”の重みを見極めよう
トルクレンチの0.2Nmのズレは、JIS規格の許容誤差内であることが多く、すぐに道具を買い替える必要はありません。
ただし、取り付ける部品の材質・構造・規定トルクの絶対値に応じて、適切な精度のトルクレンチを選ぶ判断力が大切です。特に精密部位では“合う道具を探す”判断も正解と言えるでしょう。
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