燃料代・自動車保険・車検代・税金と、車にかかるコストが年々上昇する中、安価な新車へのニーズが再燃しています。特に「必要最低限の安全装備で価格を抑えた車種」は、コスト重視のユーザーにとって魅力的な選択肢となり得ます。本記事では、装備を絞った車が本当に選ばれる時代なのか、多角的に検証していきます。
現在の新車価格の高騰と背景
近年の新車価格は、安全装備の義務化や先進技術の搭載によって上昇を続けています。自動ブレーキ、車線逸脱警報、エアバッグ、カメラ類など、国際基準に対応した装備が標準化されており、コンパクトカーでも200万円前後が当たり前となりつつあります。
加えて、原材料の高騰や円安の影響も価格に転嫁されており、庶民が気軽に新車を購入しにくい状況です。
“装備を削る”という選択肢の再評価
こうした中で、過去のように「エアコン・パワーウィンドウ無し」「エアバッグ無し」など極限まで装備を削った廉価グレードに対する注目が集まりつつあります。特に法人需要(営業車・軽貨物)やセカンドカー利用では、“走ればOK”という価値観が根強く残っています。
たとえばスズキ「アルトバン」や、トヨタ「プロボックス」などは一部グレードで極めてシンプルな装備構成となっており、価格を100万円前後に抑えています。
安全装備削減のメリットとリスク
【メリット】
・車両価格が安くなる
・修理費や整備コストも低減
・電子機器が少ないため故障リスクが低い
・運転技術を磨く意識が芽生える
【デメリット】
・事故時の被害が拡大する恐れがある
・保険料が割高になる可能性
・リセールバリューが下がる傾向
・先進装備に慣れた人には操作が不便
ユーザーのニーズの多様化と選択の自由
すべての人が高性能・高価格の車を求めているわけではありません。「とにかく安く移動できればいい」「農道や山道で使えれば十分」というニーズも根強く存在します。そのため、選択肢として装備の簡素化は一定の需要があると言えるでしょう。
実際、2023年にはインドや東南アジア市場で人気の「装備最小限モデル」を逆輸入して日本で展開しようというメーカーの動きも見られます。価格が抑えられるなら購入したいという声もSNS等で見られます。
法規制とのバランスにも注意
ただし、日本国内で販売するには「衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)」などの義務化された安全装備を外すことは現行法ではできません。つまり、極限まで安全装備を削った車両を合法的に市販するには限界があります。
一部の軽商用車では、個人用に近いシンプル仕様が展開されていますが、完全な装備レス車は難しいのが現状です。
まとめ:安価な新車は選択肢の一つとして確実に存在価値がある
物価上昇と収入の伸び悩みが続く今、安全装備を最低限に抑えた車への注目は確実に増しています。ただし、法制度や安全意識との兼ね合いから、完全な“昔ながらの装備レス車”は登場しにくいといえます。
しかし選択肢として、装備を必要最小限にしたモデルを求める声は今後も増えることが予想され、メーカーもユーザーの声に応じた柔軟な商品展開が求められるでしょう。
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