自動車を所有する以上、必ず通る道である「車検」。中でも「ユーザー車検」は、費用を抑えたいドライバーにとって魅力的な選択肢ですが、平日しか車検場が開いていないという制度上の壁があります。なぜ土日や夜間は開放されないのでしょうか?そこには制度設計の理由や運用上の事情が絡んでいます。
車検制度の基本とユーザー車検の立ち位置
車検(自動車検査登録制度)は、安全性や環境基準を満たしているかを定期的に国がチェックする制度です。整備工場に依頼するのが一般的ですが、個人でも陸運局などで「ユーザー車検」を受けることが可能です。
ユーザー車検は費用を抑えられるメリットがありますが、自分で整備点検し、書類を用意し、検査ラインを通る手間があるため、時間に余裕のある人向けとされています。
なぜ土日・夜間は対応していないのか
車検場(運輸支局や検査登録事務所)は、基本的に国の機関が運営しており、平日8:45〜11:45、13:00〜16:00といった限られた時間帯のみ対応しています。これは「行政サービス」である以上、土日や夜間の対応は原則として行っていないという、国全体の公務員勤務体制の問題も関係しています。
たとえば市役所や法務局などと同じで、車検場も一般的な公務時間に準じています。つまり「車検場だけが特別に閉鎖的」というわけではなく、制度全体の仕組みによるものなのです。
業界保護のためにユーザー車検が抑制されている?
車検場が平日しか開いていないことで、結果的に整備工場に依頼せざるを得ない構図になっているのは事実です。「業界保護のためなのでは?」という意見も一部にあります。
しかし、法的にユーザー車検は誰でも受けられるよう保証されており、その情報も国交省などで公開されています。実際、車検の予約はオンラインで可能であり、希望すれば誰でも申し込めます。
ただし、「一般の人が時間の都合で行きにくい」という事実が、結果的に整備業界への依存を促進している構図があるのは否定できません。
過去に土曜対応が導入された例も
一部の運輸支局では、過去に試験的に土曜開放を実施したことがありますが、職員のシフト管理やコスト増、利用者数の伸び悩みなどから継続されないケースが多く見られました。
また、利用者が殺到したことで現場が混乱し、「むしろ業務効率が悪化した」という声もあり、制度として根付かなかった背景があります。
実際にユーザー車検を行うには
ユーザー車検は、事前予約、点検整備記録簿の準備、各種書類提出といったプロセスを自分で行う必要があります。簡単ではありませんが、しっかり準備すれば誰でも通過可能です。
たとえば、「平日休みが取れない方は、早朝から順番取りをする」「午後からの時間帯を利用する」「業者代行との費用差を見て選ぶ」といった工夫でユーザー車検を活用する人もいます。
今後の制度改善の可能性
行政のデジタル化や柔軟な働き方の広がりによって、今後は「オンラインでの申請受付」や「民間委託型の車検場」など、利便性を高める仕組みが求められています。
実際、2020年代以降は自動車登録手続きのオンライン化も進められており、「夜間受付」や「平日以外の窓口開設」も社会的議論として注目されています。
まとめ:不便さには制度的背景があるが改善の余地も
車検場が土日に開かないのは、「ユーザー車検を妨げるため」ではなく、公務員制度と業務効率の枠組みの中で運用されているからです。しかし、その結果として「誰もが自由に車検を受けられる」環境とは言い難く、制度改善への声が上がっているのも事実です。
車検制度の本来の目的である「安全確保」を守りつつ、誰もが利用しやすい仕組みにしていくことが、今後の大きな課題となっています。
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