バイクのカスタムにおいて、二次エアーキャンセルは排気系の定番メニューのひとつです。しかし「二次エアーキャンセルをしたら低速トルクが落ちた」という声も見かけます。これは果たして本当に起こる現象なのでしょうか?その理屈や背景、実際の影響について詳しく解説していきます。
二次エアーシステムの基本構造と目的
二次エアー(AIS:Air Injection System)とは、排気ポートに外気を強制的に送り込むことで、排出ガス中の未燃焼ガスを酸化させ、COやHCといった有害物質を低減するためのシステムです。
このシステムは排ガス浄化を目的としているため、エンジンの燃焼自体や出力性能に直接関与するわけではありません。ただし、排気流に空気を混ぜる構造上、排気抵抗やセンサーの挙動に間接的な影響を及ぼすことがあります。
なぜ二次エアーキャンセルで低速トルクが落ちるのか?
一般的に二次エアーキャンセルによってトルクが落ちるとは考えにくいですが、一部の車種・条件では以下の理由で体感的なトルク減少を感じる可能性があります。
- 燃調マップがAISありきで最適化されている(センサー補正が効いてしまう)
- O2センサーが排気酸素濃度の変化を拾って学習補正を起こす
- 排気管内の流速や温度変化によりECUの挙動が不安定になる
特に近年のFI車では環境対策で燃料が薄め(リーンセッティング)になっているため、センサーが誤検知してさらに薄くなる→低速時にパワー不足を感じるという悪循環が起こることも。
実際の走行例とオーナーの体験談
例えば、250ccのFI車でAISキャンセルをしたユーザーが「アクセルを開けてもワンテンポ遅れて加速するようになった」と述べた例があります。AIS復活後は「低回転域のツキが戻った」とのこと。
これはまさにECUがAISありきで制御しているためで、AISをオフにするなら燃調リセッティングが必要なケースです。逆にキャブ車など制御がシンプルな車種では、二次エアーの有無で走行フィールに大きな違いは出にくい傾向にあります。
燃調と二次エアーの関係性
よく誤解されがちですが、二次エアーは吸気系ではなく排気系に空気を送り込むシステムです。つまり「燃調が濃くなる/薄くなる」こと自体には直接関与しません。ただし、前述の通りO2センサーが誤作動することで間接的に燃調が変わることがあります。
特にAIキャンセル後にO2センサーの出力が変化し、ECUが学習を進めた結果、実燃調が変わるケースは少なくありません。こうなると、パワーが出ない・燃費が悪化する・エンストが起きるなどの不具合が出る可能性があります。
社外マフラー使用時の注意点
社外マフラーとAISキャンセルを組み合わせた場合、以下のような複合的な影響が出ることがあります。
- 排気抵抗が変わりECU制御とズレが生じる
- 音量・音質が変わりノッキングの兆候がわかりにくくなる
- 排気温が上昇し、O2センサーの応答が不安定になる
こうした条件が重なることで、体感的な「パワーダウン」や「低速トルクの薄さ」を感じる人もいます。
対策と改善のヒント
もしAISキャンセルでトルク低下を感じた場合、以下のような対処法を検討してみましょう。
- O2センサーキャンセラーを導入する
- 燃調コントローラー(サブコン)を取り付ける
- ECU書き換えでAIS無し前提のマップに変更
特に最新型のFI車では、ECUが繊細な補正を行っているため、燃調に手を加えずAISだけをキャンセルするのはリスクが高いとされています。
まとめ:二次エアーキャンセルは慎重に判断しよう
バイクの二次エアーキャンセルによる低速トルクの低下は、ECU制御やセンサーの影響によって起こる可能性がある現象です。特に近年のFI車では燃調がシビアであり、AISを外すことで意図せぬ制御ズレが起こることがあります。
もしカスタム後にパフォーマンスの低下を感じたら、燃調の見直しや補正ツールの導入を検討するのが効果的です。バイクごとの仕様やECUの癖を理解したうえで、バランスのとれたチューニングを目指しましょう。
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