トヨタ・アルファードが高級ミニバン市場で圧倒的な存在感を放つなか、長らくモデルチェンジが行われてこなかった日産・エルグランドの新型発表が注目を集めています。「なぜ今さら?」という声もある中で、日産がエルグランドを廃止せず新型を投入する背景には、戦略的な理由が存在します。
高級ミニバン市場の現状とトヨタの強さ
現在の日本における高級ミニバン市場は、トヨタのアルファード/ヴェルファイアがほぼ独占状態。圧倒的な販売実績とブランド力を背景に、リセールバリューも高く、ファミリー層から経営者、VIP送迎車両まで広く支持されています。
この市場に後発で挑むには、商品力だけでなく「ブランドイメージ」や「ネットワーク」、さらにはディーラー営業力も重要な要素となります。
エルグランドが廃止されなかった理由
一見、市場での存在感が希薄に見えるエルグランドですが、日産にとっては「高級ミニバン=プレミアムブランドイメージの象徴」としての役割を担っており、ラインアップからの削除はブランド上の損失につながります。
また、海外市場——特に中国や東南アジアでは、日本以上に高級ミニバンのニーズが拡大しており、国内市場を基準に単純な廃止判断ができない状況です。
後出し戦略と新型モデルに期待されること
後発であることはデメリットにもなりますが、先行モデルの課題を分析し、改良点を織り込んだ商品開発が可能という利点もあります。日産が新型エルグランドで狙うのは、ただの追従ではなく、次世代型の価値提案。
例えば、e-POWERの導入やプロパイロット2.0など、電動化と運転支援技術の融合による「新しい高級感」が打ち出される可能性も高いです。
ブランド力と技術力は別のベクトルで構築可能
確かに「トヨタ」というネームバリューは強力ですが、日産には日産なりの技術アプローチがあります。特に近年の電動化分野では世界的な評価も高く、「走りの良さ」「燃費性能」「静粛性」などで勝負する余地は十分にあります。
加えて、日産が今後エルグランドを国内外でどう位置づけて展開していくか次第では、ブランド構築の新たなチャンスにもなりえます。
他メーカーの撤退事例が語るもの
ホンダのエリシオンや三菱のグランディスなど、過去に同様のポジションを狙っていた車種が撤退したことから「エルグランドも同じ運命では」と見る向きもあります。
しかし、これらの車種は新技術の訴求不足や明確な差別化戦略の欠如がありました。エルグランドは長期的なブランド価値の維持を意識したうえで、日産が改めてテコ入れをしている点で状況は異なります。
まとめ|エルグランド復活の意味と今後の期待
エルグランドが廃止されず、新型として登場するのは単なる「過去の栄光への固執」ではなく、日産が市場におけるプレミアムセグメントで再び存在感を示そうとする挑戦でもあります。
市場の声に耳を傾け、トヨタ一強の牙城に風穴をあけるだけの技術力と設計思想が新型エルグランドに込められていれば、一定の需要を見込むことは十分に可能です。今後の正式発表や実車の評価が、その答えを示すでしょう。
コメント