原付に乗っていると「遅くて抜かれるくせに、信号待ちですり抜けて前に出たがる」という場面を見かけることがあります。これは単純な“抜かれたくない”という気持ちだけでなく、交通事情やライダー特有の心理が影響していると考えられます。本記事では、その背景・心理・具体的な仕組みを整理してみましょう。
通勤・通学における原付の立ち位置
原付は車両やバイク(中型・大型)と比べると最高速度・加速力ともに限られています。そのため、一般道路ではどうしても他の車に抜かれやすくなります。
しかし一方で、通勤・通学などで“手軽に移動できる”という利点もあり、近距離移動には根強い人気です。車に比べて燃費や維持費も低く済むため、学生や若年層に選ばれることが多いです。
「前に出たがる」動きの背景と心理
信号待ちで原付が車の前に出るのは、「抜かれて遅れてばかり」という状況を少しでも避けたいという心理が働いていると考えられます。例えば、車列の最後尾で待つと「ずっと抜かれ続けている」という感覚が強まるため、少しでも前に出て“視界・存在感”を確保したいのです。
また、交差点の先頭に出ることで「スタートで遅れず発進できる」「赤→青のタイミングで自分が先に動ける」という利点も期待できます。こうした“少しでも優位に立ちたい”という心理が、すり抜け行動を促す一因です。
具体例:朝の通学ラッシュでの原付の動き
例えば高校生が通学路で原付に乗っていて、車列の後ろで停まっているとします。隣の車が発進するたびに「また抜かれた」と感じることがあります。そこで信号待ち時に隙間を見つけて前に出ることで、「次こそ抜かれない」「スタートで遅れない」という安心感を得ようとするわけです。
ただしこの動きは、地域・道路状況・交通量によっては危険を伴うこともあります。たとえば車のドアが開く、車線変更されるなど“見落とし”によるリスクも孕んでいます。実際、海外では“車列の間を抜けて前に出る(lane‑filtering/lane‑splitting)”という行為について安全性の研究もあります。 [参照]
交通法規とリスクについての整理
日本において、原付が車のすぐ前に出る行為にはグレーゾーンも存在します。“すり抜け”や車列の間を縫う行為が必ずしも法的に明確に許可されているわけではありません。道路・状況によっては違反となる可能性があります。
さらに、車両が並んで停まっている状態から前に出ることで、交差点や信号に向けた動きで車が急に右折・左折・ドアを開けるといったリスクが高まります。海外のデータでも「 stopped or very slow traffic 」でバイクが前に出る(=filtering)ことがリスク軽減につながる可能性があるという報告があります。 [参照]
リスクを回避するためのポイント
- 無理なすり抜けをしない:車の輪の間を無理に抜けようとすると、車の死角や急な動きに対応できず危険です。
- 見える位置を確保:例えば信号待ち時、車の横ではなく少し前で停まることで“自分が見える位置”を作ると安全です。
- 適切な加速・発進準備:スタート時に遅れないように、クラッチ操作・ミラー確認をあらかじめ意識しておくと安心です。
なぜ「遅くて抜かれる」状況を少しでも変えたがるのか?
心理的には、「置いていかれる/取り残される」感覚が強く働いています。特に学生・初心者原付ライダーでは、同年代の車やバイクと比べて速度・加速力に劣っていることに敏感になりがちです。
また「信号待ちの時間を無駄にしたくない」「次の信号を少しでも先に進みたい」という“時間効率”志向も関わります。原付という比較的身軽な移動手段だからこそ、“ちょっとでも先に”という動きが出やすいのです。
まとめ
原付ライダーが「遅くて抜かれるくせに信号待ちですり抜けて前に出たがる」背景には、交通の状況・心理的な要素・法規・リスクが複合的に作用しています。車列の最後で待つ“遅れ感”を少しでも減らしたいという気持ちが、前に出ようという行動につながるわけです。
ただし、安全を第一に考えるならば、無理なすり抜けや死角に隠れた停車位置は避けるべきです。見える位置を確保し、安心してスタートできるポジションをとることが、原付ライダーにも他の車両にも優しい運転姿勢と言えるでしょう。


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