車高を変えずにプリロードだけを調整した場合、リアのマルチリンク式サスペンションではアライメントに影響が出るのでしょうか?一見変わらなそうなこの微調整も、実は挙動に微妙な違いを生むことがあります。本記事ではその仕組みと具体的な変化、そして注意点について解説します。
プリロードとは何か?その基本的な役割
プリロードとはスプリングにあらかじめ与える“初期荷重”のことです。車高調サスペンションなどで調整可能なプリロードは、サスペンションの沈み込みの初期状態や乗り心地に影響を与える要素です。
「車高を変えずにプリロードだけを増減する」ことは、スプリングの反応や伸縮の余裕を変えることで、静的な車高は一定でも動的なサスペンションジオメトリに変化が生じる可能性があります。
マルチリンク式の構造とジオメトリの関係
マルチリンク式サスペンションは、複数のリンクアームで構成され、アライメントの変化を最小限に抑えつつも走行中の路面変化に柔軟に対応します。
しかし、プリロードを変えるとスプリング長が微妙に変わり、リンクの静止位置が変わることでキャンバー角・トー角などにごく僅かながら影響を与えることがあります。とくにスラストアングルや左右バランスの微差が顕著になる場合もあります。
実例:プリロード調整で起きた変化
例として、Z33型フェアレディZにおいてリアプリロードを+5mm増したところ、車高に変化はなかったものの、アライメント測定でリアのキャンバーが−1.6°から−1.8°へ、トーも若干ズレたという結果があります。
このようにプリロードが大きくなるとリンクの自然な位置が変わるため、ジオメトリ補正としてアライメントにも反映されることがあります。
調整後はアライメント測定・補正を推奨
たとえ“車高が変わらない”としても、サスペンションの動き出しの位置が変わることでアームの角度が変化するため、数mmの違いがアライメントに表れます。
トー変化が発生すると直進性やタイヤ摩耗に影響する可能性があるため、プリロード調整後は必ずアライメント測定を実施するのが望ましいです。
プリロード調整で注意すべきポイント
- 左右で異なるプリロード設定をしない:直進安定性が損なわれます。
- ストリート走行でも変化を体感できる:特に高速域や段差でのバンプ特性に違和感が出ることがあります。
- 調整前後のアライメントデータを記録:後でセッティングを戻す際に有効です。
まとめ:プリロード調整=アライメントに微細だが影響あり
結論として、車高を変えずにリアマルチリンクサスペンションのプリロードだけを変更した場合でも、アライメントにわずかながら影響が出る可能性があります。とくにトーやキャンバーなどのジオメトリに変化が出るため、走行安定性やタイヤ摩耗が気になる場合はアライメント測定を行うことをおすすめします。
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