原付バイクの整備では、ピストンやカムを外した状態から正確に圧縮上死点(TDC)を見極める作業が必要になることがあります。AF70ジョルノのようなエンジンでは、組み上げ前にこのポイントを見失うと、再始動できないトラブルにつながることも。この記事では、圧縮上死点を確実に特定するための方法とその手順を解説します。
圧縮上死点と排気上死点の違いを知っておこう
4ストロークエンジンには、ピストンが上昇するタイミングが2回あります。一つは「排気上死点(排気行程後)」、もう一つが「圧縮上死点(圧縮行程後)」です。見た目は同じピストンの上昇でも、バルブの開閉状態がまったく異なります。
圧縮上死点では吸気バルブと排気バルブが両方閉じており、点火の直前に相当します。これに対し排気上死点では、排気バルブが開いている状態です。この違いを理解しておくと判断が容易になります。
バルブの動きで見極める基本の手順
ピストンが上死点にあるタイミングで、吸気と排気の両バルブが閉じている状態であれば、それは圧縮上死点です。以下の手順で確認しましょう。
- カムシャフトを仮組み(スプロケット無しでも可)
- ロッカーアームがバルブを押していないことを確認
- シックネスゲージでバルブクリアランスを測定し、両バルブに隙間があるか確認
この状態であれば、クランクは圧縮上死点にある可能性が高いと判断できます。
圧縮を体感で確認する方法も
もう一つの簡易的な方法として、プラグホールを塞ぎながらクランクを回し、圧力が指先に強くかかる瞬間=圧縮上死点直前と判断することができます。
ピストンが上がる途中で「プシュッ」と強い空気の押し出しを感じたら、それは圧縮工程である証拠です。そこからもう少し回してピストンが最上部に来た瞬間が圧縮上死点です。
タイミングマークを活用する
AF70ジョルノには、フライホイールやクランクケースに刻まれた「Tマーク(上死点)」が存在します。このTマークを基準に合わせることで、物理的な上死点は確認できます。
ただし、Tマークだけでは圧縮か排気かは判別できないため、バルブの閉状態と組み合わせて判断することが重要です。カムシャフトを取り付けたあと、タイミングマークの位置も再調整する必要があります。
トラブルを防ぐための実践的アドバイス
作業中にクランクを回してしまった場合、焦らず「上死点+バルブ状態」で圧縮上死点を探せば、エンジンは正常に組み上げられます。
また、バルブタイミングのずれやカムチェーンの張り具合などにも注意して、1つずつ順を追って確認することがトラブル防止につながります。可能であればサービスマニュアルを確認し、規定のマークと一致しているかも必ず確認しましょう。
まとめ:圧縮上死点の見極めは冷静さと基本理解がカギ
AF70ジョルノのような空冷4ストエンジンの組み立てでは、ピストンとバルブの動きの理解が作業成功の鍵を握ります。クランクが回ってしまっても、落ち着いてバルブとタイミングを確認すれば、圧縮上死点は必ず見つけられます。
整備初心者であっても、構造を理解しながら作業を進めれば、大きなトラブルなくエンジンを仕上げることが可能です。
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