かつてのクラシックカーやヴィンテージエンジンでは、スターターモーターの代わりに「クランク棒」を使ってエンジンを始動する方式が一般的でした。現代のクルマとは異なるこの始動方法に対して、「どうやってエンジンを止めるのか?」といった疑問を持つ人も少なくありません。本記事では、手動始動車の構造とエンジン停止の仕組みについて、分かりやすく解説します。
クランク棒でエンジンを始動する仕組み
クランク棒(クランクハンドル)は、車両の前方に差し込んで手動で回すことでエンジンを動かすツールです。エンジン内部のクランクシャフトを物理的に回し、燃焼サイクルに必要な空気・燃料の吸入と圧縮を行い、火花を飛ばして始動させます。
この方式は主に1910〜1930年代の自動車で使用されており、エンジン設計が比較的シンプルな4ストローク直列型が主流でした。適切なタイミングと力加減で回さないと、逆回転による怪我のリスクもありました。
エンジン停止の方法:主に2つの手段
エンジンを止める方法としては、主に以下のような方法が取られていました。
- 点火スイッチをオフにする:エンジンが動き続けるためには、点火プラグに電気を供給し続ける必要があります。これを遮断することでエンジンは止まります。
- 燃料供給を遮断する:キャブレターなどからの燃料供給を止めることで、燃焼ができなくなり、エンジンは停止します。
現代車のキー操作とは異なり、これらの操作は機械的スイッチやバルブの操作によって行われていました。
イグニッションスイッチの役割
点火系のオン・オフを司る「イグニッションスイッチ」は、現在でも基本構造は残っていますが、昔の車ではキーではなく手動スイッチで制御していました。これをオフにすると、スパークプラグへの電流が止まり、燃焼が止まることでエンジンが停止します。
つまり、「クランクで回してかけたエンジン」は「スイッチで止める」という構造で、起動と停止は別々の手段を使っていたのです。
燃料遮断式も存在した
より機械的な車両では、ガソリンタンクからキャブレターへの燃料ラインにバルブが設置されており、手動でそれを締めることでエンジンを止めるケースもありました。
この方式は、長時間停車する際や整備時に安全のため使われることも多く、エンジンを止めると同時に燃料の流れを遮断して火災のリスクを下げる効果もありました。
現代のスターターモーターとの違い
現代の車ではセルモーター(スターターモーター)によって電気的にエンジンを回し、キーやスタートボタンで始動・停止ができます。一方で、クランク始動車では始動と停止の動作が別々の物理操作に分かれているという違いがあります。
現代人にとっては逆に新鮮ともいえる仕組みであり、クラシックカーイベントやレストア愛好家の間では今でも人気があります。
まとめ:手動始動車も「ちゃんと止まる」仕組みがある
クランク棒でエンジンを始動する車は、一見すると古めかしく感じるかもしれませんが、点火遮断や燃料遮断などの合理的な方法でエンジン停止が可能です。技術が進歩しても基本原理は大きく変わらないというのも、機械工学の魅力のひとつと言えるでしょう。
クラシックカーの構造を知ることで、今乗っている車の仕組みにも新たな視点が加わるかもしれません。
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