スーパーカブ110のような軽二輪バイクに乗っていると、法定速度で走行していても車から「遅く見られている」と感じることがあります。特に脇道からの合流や右折車による強引な進入は、カブライダーにとって日常的なヒヤリ・ハットの一因となります。
なぜバイクは遅く見えるのか?
これは「大きさの錯視(サイズ・スピード錯視)」という視覚心理に起因する現象です。人間の目は、小さい物体はゆっくり動いているように錯覚する傾向があります。スーパーカブのようなコンパクトな車体は、自動車よりも物理的に小さいため、同じ速度で走っていても自動車側からは遅く見えるのです。
また、ヘッドライトの配置や輪郭が単調なデザインの車両は、速度感がつかみにくく、夜間になるとよりこの錯覚が強くなります。
カブだから遅いと思われる現実
スーパーカブは長年、50ccの原付1種のイメージが強く残っています。そのため、カブ110のような原付二種(第二種原動機付自転車)であっても、ドライバーの先入観により「どうせ遅い」と判断されやすい傾向があります。
夜間や一瞬の判断が求められる状況では、車種の違いを正確に見分けられるドライバーは少なく、反射的に「先に行ける」と誤った判断をすることが多発します。
実際に起きやすい危険シナリオ
・脇道からの車がスーパーカブの接近を過小評価し、合流してくる
・対向車線からの右折車が、こちらの速度を見誤って割り込んでくる
・交差点での見切り発進や、左折車による巻き込みが発生する
これらはすべて、相手がバイクの存在を見落としたり、速度を正しく認識できていないことに起因しています。
ライダー側ができる予防策
まず重要なのは、「自分は遅く見えているかもしれない」という前提で行動することです。スピードを出すのではなく、“存在をしっかり見せる”ことを意識しましょう。
- 車体中央よりを走る:あまり左に寄りすぎると、すき間に見えて強引に割り込まれやすくなります。
- 明るいヘッドライトやウェアを着用:夜間は特に視認性を高める工夫が必要です。
- 右折車がいる交差点では減速:万一の割り込みに備え、急制動できる準備を。
また、前照灯のハイビーム活用や、ウインカーの早めの点灯、ブレーキランプの点滅なども、相手に意図を明確に伝える上で有効です。
交通心理と視認性向上のポイント
交通心理学では、対向車の速度や距離を正確に判断するのは非常に難しいとされています。特に、背景に街路樹や建物がある場合、相手車両が“動いているか”すら認識できないこともあります。
そのため、バイクは静止して見えることすらあるのです。これを逆手にとって、敢えて車体を少し左右に振る「ジグザグ走行(スネーキング)」や、意図的に軽くブレーキランプを点灯させるなど、小さな動きで存在をアピールするテクニックも有効です。
まとめ:誤認される前提で走るという考え方
スーパーカブ110であっても、自動車ドライバーからは「遅いバイク」「小さい乗り物」として認識されやすく、その結果として危険な状況に巻き込まれることがあります。
ライダーとしては、自分の走行が“過小評価されている”という前提で、安全マージンを常に確保することが求められます。視認性の向上、走行位置の工夫、心理的余裕を持った運転こそが、日々の安全を守る最良の手段となるでしょう。
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