AZ851を始動しようとすると、リコイルスターターが非常に重く、引きづらいと感じるケースがあります。これはエンジンの設計やメンテナンス状況によって引き起こされる現象で、特に「オートデコンプ機能」が正常に働いていないことが原因の場合があります。この記事では、AZ851のリコイルが硬くなる原因と、解決策のひとつであるバルブクリアランス調整の方法について詳しく解説します。
AZ851に搭載されるオートデコンプ機能とは
オートデコンプレッション(自動減圧)機構は、エンジン始動時の圧縮圧力を一時的に下げて、リコイルの引き重りを軽減するための機構です。カムシャフトに仕込まれた小さなウェイトが、低回転時に排気バルブをわずかに開き、圧縮を逃がすことで効果を発揮します。
この機構が故障または汚れによって動作不良になると、リコイルが非常に重くなり、エンジンの始動が困難になります。
スパークプラグを外すと軽くなる理由
スパークプラグを外すと、燃焼室の圧縮が抜けるため、リコイルが軽くなるのは自然な現象です。つまり、リコイルが重い原因が「圧縮の逃げ場がないこと」にあることを示しています。したがって、エンジン本体側に問題がある可能性が高いです。
この状態でリコイルが軽くなるということは、デコンプレッション機構が正常に働いていない、またはバルブクリアランスが不適切で機構が作用していないことが考えられます。
バルブクリアランスとは?なぜ調整が必要か
バルブクリアランスとは、バルブステム(軸)とロッカーアームまたはカムとの間の隙間のことです。この隙間が適正でないと、バルブの開閉タイミングや圧縮に影響を与えます。
特にAZ851のような汎用エンジンでは、バルブクリアランスが広すぎるとオートデコンプが機能しなくなり、リコイルの引きが重くなります。逆に狭すぎるとバルブが閉まりきらず、エンジン性能が低下する原因になります。
AZ851のバルブクリアランス調整手順
- まずエンジンが完全に冷えている状態で作業を行います。
- ロッカーカバーを外し、カムシャフトとバルブロッカーの位置を確認。
- 圧縮上死点(TDC)を確認し、エンジンのピストンが一番上にある位置に合わせます。
- シックネスゲージ(隙間測定工具)を使用して、規定値(例:IN 0.10mm / EX 0.15mm など)に合わせて調整します。
- 調整後、ロックナットをしっかり締め、再度クリアランスを確認。
作業にはシックネスゲージ、スパナ、マイナスドライバーが必要です。自信がない場合は、専門店に依頼することをおすすめします。
その他のチェックポイント
オートデコンプ機構自体の破損や汚れによる不具合も考えられます。エンジンの使用履歴やオイルの管理状況によっては、カムシャフトの交換やクリーニングが必要になることもあります。
また、オイル粘度が合っていない場合も始動性に影響します。特に冬場は低温用オイルの使用を検討するとよいでしょう。
まとめ:リコイルが重い原因を丁寧に切り分けることが解決の鍵
AZ851のリコイルが重い場合、最初にオートデコンプレッション機能とバルブクリアランスを疑うのが基本です。バルブクリアランスの調整は、比較的シンプルな作業で済むことが多く、エンジン性能の回復にもつながります。
リコイルの違和感を放置せず、早めに点検・調整を行うことで、エンジンの寿命を伸ばし、快適な作業環境を維持することができます。
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