かつては夕暮れ時に点灯の合図が出され、ナイトセッションの始まりを象徴していた鈴鹿8耐のヘッドライト。しかし、最近のレースでは昼間から常時点灯している姿が当たり前となっています。この記事では、いつからヘッドライトの常時点灯が義務化されたのか、その理由や安全性、国際レギュレーションとの関係までを詳しく解説します。
かつての鈴鹿8耐:ライト点灯は夕方からだった
2000年代初頭までの鈴鹿8耐では、18時頃にレースディレクターから「ライトオン」のサインが出されるのが恒例でした。これがナイトセッション突入の合図で、観戦者にとってもドラマチックな演出でした。
たとえば、2003年のレースでは17時半過ぎにライト点灯指示があり、ライダーたちが一斉にスイッチを入れる姿が中継でも強調されていました。
常時点灯はいつから?FIM規定の影響
鈴鹿8耐がFIM世界耐久選手権(EWC)に正式復帰した2016年以降、FIMの国際レギュレーションに準拠する形でヘッドライトの常時点灯が義務付けられました。
このレギュレーションはFIM(国際モーターサイクリズム連盟)の「耐久レースにおける車両識別および安全確保」の一環で、昼夜問わず常に点灯が必要とされています。これにより、各マシンの識別性が向上し、特に天候が悪化した際の視認性確保にも繋がっています。
なぜ常時点灯が重要なのか?安全性と識別性の向上
耐久レースでは複数のカテゴリーが混在することもあり、トップチームとバックマーカーのラップ差が生じやすい特徴があります。そのため、他車の存在をいち早く把握できるよう、ライトによる視認性向上が必須となりました。
たとえば、8耐に参加するEWCマシンとSST(スーパーストック)マシンでは速度差があり、接触リスクを減らす意味でもヘッドライトの点灯は重要です。
レース演出としての“点灯サイン”が消えた理由
演出として印象的だった「ライトオン」の瞬間は、レースファンにとって情緒的なものでもありました。しかし、安全性の観点が重視されるようになり、演出よりも実務的な基準の遵守が優先される傾向になっています。
その結果、レーススタート直後から常時ライトを点灯する仕様が定着し、いわば“演出の一部”だった点灯タイミングの儀式は姿を消しました。
FIM以外の耐久レースでも常時点灯は常識に
実は鈴鹿8耐だけでなく、FIM EWCに含まれるボルドール24時間やスパ24時間といった他の耐久レースでも同様に常時点灯が採用されています。
そのため、世界耐久選手権全体として、安全性確保のグローバルスタンダードとして常時点灯がルールとして機能していると考えられます。
まとめ:常時点灯は安全性を優先した時代の流れ
鈴鹿8耐のヘッドライト常時点灯は、FIM国際レギュレーションの適用を機に2016年頃から本格的に始まりました。安全性と識別性の向上が目的であり、夜間突入の演出的な「点灯タイム」は姿を消しました。
かつての演出を懐かしむ声もありますが、現代のモータースポーツはより高い安全性と視認性が求められる時代。その中で進化する鈴鹿8耐のルールは、レースの未来を考える上でも重要なポイントとなっています。
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