かつての2ストローク50ccエンジンは、現在の原付バイクとは一線を画す高出力を誇りました。特に7.2psクラスのモデルはレーサーレプリカに採用され、俊敏な加速性能と軽量性で注目されましたが、「大柄な車体」での走行性能はどうだったのでしょうか?この記事では、PCX125のようなミドルサイズスクーターの車格に50ccエンジンを載せた場合の実用速度や挙動について、具体的な物理特性や実例を交えて解説します。
2ストローク50cc・7.2psの基本性能
1980〜1990年代、ホンダNSR50やヤマハTZR50などが搭載していた高回転型の2スト50ccエンジンは、最大7.2ps(約7.1馬力)を誇り、車重70〜90kg程度の軽量車体と組み合わせることで、最高速80km/h以上を記録していました。
このスペックは、現代の4スト125ccエンジンと比べても一部の加速性能では互角、あるいは上回る場面もあり、ピーキーなエンジン特性と軽量性による爽快な走行フィールが魅力でした。
PCX125クラスのボディサイズとは
ホンダPCX125の全長は1,935mm、車重は130kg超。これは50ccスクーター(例:Dioの102kg)と比べると明らかに大型で、タイヤ径も14インチと高く安定志向です。
このサイズ・重量の車体に2スト50ccエンジンを載せた場合、動力性能・加速力ともに著しく影響を受けることが予想されます。
重量・空気抵抗が及ぼす影響
バイクの加速と最高速に関わる要因は主に次の3つ:
- 車重の増加 → 加速が鈍化し、登坂力も落ちる
- タイヤ径の増加 → 回転トルクの伝達に影響
- 空気抵抗の増加 → 高速域の伸びに影響
50ccエンジンが出せる最大トルクと出力では、130kg超の車重をスムーズに引っ張るのは困難で、仮にギア比などを最適化しても最高速度は40〜60km/hに抑えられるのが現実的です。
実例:50ccエンジンを大型ボディに載せたカスタム例
一部のカスタム車では、PCXサイズやシグナスボディに2スト50ccエンジンを搭載する事例があります。しかし「まともに走らせるにはボアアップが必要」「平地なら60km/hは出るが登りは厳しい」といった報告が多数。
特にノーマル7.2psのままでは、出足や坂道発進に大きなストレスが伴い、街乗りにおいて実用性は限定的になると考えられます。
一人乗りでの速度の現実的なライン
仮に、空荷状態・ライダー1名(60〜70kg想定)で走行した場合、平坦路での巡航は50〜55km/hが目安。追い風や軽量な個体なら最大60km/h程度まで伸びる可能性はあります。
ただし、加速には時間がかかり、信号スタートや合流では現代車両と比較して見劣りする場面も多くなるでしょう。
まとめ:2スト50cc+大型ボディの走行性能は限定的
7.2psの2スト50ccエンジンは、軽量なレーサータイプで真価を発揮する高性能ユニットです。しかし、PCX125クラスの大柄な車体に搭載した場合、重量増・空気抵抗増により、速度性能は大幅に低下します。
一人乗りであれば平地で40〜60km/h程度の走行は可能ですが、余裕ある走行や登坂性能を求めるなら、排気量拡大やギア比変更などの改造が不可避となるでしょう。実用性や安全性の観点からも、ボディとエンジンのバランスを意識することが重要です。
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