なぜ欧州車はCVTではなく8ATを選ぶのか?トランスミッション選定の思想と性能比較

車検、メンテナンス

欧州車に乗ると、スムーズでリニアな加速感とドライバーとの一体感に感動する人は多いでしょう。その背後にあるのが、8速AT(オートマチックトランスミッション)などの多段式トランスミッションの採用です。CVT(無段変速機)を用いる車も多い日本市場とは対照的に、なぜ欧州ではCVTよりもATが選ばれる傾向にあるのでしょうか?

欧州車とATの深い関係

欧州車の多くは、ドライバーと車の一体感、すなわち走りの質感を重要視します。8ATや7DCT(デュアルクラッチ)といったトランスミッションは、リニアな加速感、エンジンブレーキの効き、パドルシフトとの連携など、ドライバーの意図を忠実に反映できる特性を持っています。

特にBMWやアウディ、メルセデスなどのプレミアムブランドでは、高速域の加減速やスポーツドライビングにおける変速制御の緻密さが重視されるため、CVTのような滑らかすぎる感覚は好まれません。

CVTの利点と課題

CVT(Continuously Variable Transmission)は変速ショックがなく、エンジンを常に効率的な回転域に保つことができるため、燃費性能に優れるというメリットがあります。特に日本のような信号や渋滞が多い都市部では、CVTの滑らかさは大きな武器となります。

しかし、CVTはトルク対応に限界があり、高出力エンジンや急加速を多用する走行環境には不向きです。また、加速時にエンジン音と加速感が一致しない「ラバーバンドフィール」が発生し、ドライビングプレジャーを損なうという評価もあります。

8ATが選ばれる理由

ZF製8速ATのように、トルクコンバーターと電子制御が高次元で融合したATは、変速スピードや効率でCVTに劣らず、耐久性とトルク対応力で勝ります。

実際、8ATは以下のような性能を実現しています。

  • 0.2秒未満の変速スピード
  • 2000Nm以上の高トルク対応
  • 複数ギアを同時に噛ませるダイレクトな感覚
  • ロックアップ率の向上による伝達効率の改善

これにより、欧州車特有の高速巡航・峠道・サーキット走行においても、ドライバーの操作とエンジン特性がシームレスにつながる感覚が得られます。

液体伝達(トルクコンバーター)のロスは改善済み?

一見、液体で動力を伝えるトルクコンバーターはパワーロスが大きいように思えますが、近年の技術進化により、ロックアップクラッチによる直結モードが常用されることで、実効ロスは非常に小さくなっています。

また、加速時の滑らかさや発進時のトルク増幅効果など、トルクコンバーターが持つメリットも無視できません。

まとめ:走りを追求する欧州車だからこそCVTは選ばれない

欧州車がCVTではなく8ATやDCTを選ぶ理由は、単なる効率ではなく、“ドライバーとの一体感”を何よりも重視しているからです。CVTの効率性は都市部や低速域では大きなメリットですが、スポーティで高速域を重視する欧州の車文化においては、ATやDCTのほうが理想的な選択となるのです。

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