クレーン操作の中でも、吊荷の振れを抑える「追いノッチ」は安全性を確保するために重要な技術です。特に、荷が左右に振れてしまった際にどのように対応すべきか、半押し操作との関係など、実務に即したノウハウを身につけておくことは、操作者自身だけでなく現場全体のリスク低減にもつながります。
追いノッチとは何か?基本原理をおさらい
追いノッチとは、吊荷が振れた際にその振れの方向へクレーン(台車またはトロリー)を動かし、荷とワイヤーをできるだけ垂直に保つための操作です。振れを止める目的で使われ、吊荷の動きをコントロールしながら安全な吊り下ろしや走行を行う上で不可欠な操作です。
この技術は、特に振れの幅が大きくなったときに荷の振動を最小限に抑えるために用いられます。慣性に逆らうのではなく、あえて「追いかけて止める」という考え方が基本です。
「振り切れた方向へ動かして一直線で止める」は正解か?
「荷が左右に振り切れたら、その方向へ動かして、吊荷がワイヤーと一直線になったところで停止する」という操作は、基本的には追いノッチの考えに合致しています。ただし、“タイミングと停止の急加減”が非常に重要になります。
停止のタイミングが遅れると、逆方向への新たな振れを生み、振幅がむしろ大きくなってしまう可能性があります。また、急停止すると吊荷の反動が強くなり、かえって不安定な挙動を招くリスクがあります。
半押し操作は効果的?微調整と速度制御の意義
ON/OFF押釦を使う際に“半押し”で操作することで低速走行を実現できるタイプの制御装置を搭載しているクレーンでは、半押しは極めて有効なテクニックです。微速で追いノッチを行うことで、停止位置の精度が上がり、急激な挙動変化も避けられます。
逆にON/OFFスイッチしかない古い機種では、微速制御ができないため、少しでもタイミングがずれると再度振れを生む要因になるため注意が必要です。
実際の現場での追いノッチ操作の流れ
以下に、安全な追いノッチ操作の手順例を紹介します。
- ① 荷が振れ始めたら振れの方向と幅を確認
- ② 振れのピークを見極め、同方向にタイミングを合わせて移動開始
- ③ ワイヤーが垂直に近づいたら速度を緩める(微速が理想)
- ④ ワイヤーと荷が一直線になる瞬間を見計らって停止
- ⑤ 荷が止まりきるまで一呼吸おく(反動を見ながら静止を確認)
このように、判断力とタイミング、そして装置の特性に応じた速度調整がポイントとなります。
注意点とよくあるミス
追いノッチ操作でありがちなミスには以下があります。
- 動作が早すぎて振れのピークを通り過ぎてしまう
- 停止タイミングが遅れて、逆方向に振れを助長する
- 一度で止めようと強引な加減速を行う
追いノッチは“数回に分けて徐々に振れを小さくする”意識を持つと安全性が高まります。
まとめ:追いノッチは“タイミング×微速制御”が鍵
吊荷の振れをコントロールする追いノッチは、熟練の技術と判断力が求められる重要な操作です。振り切れた方向への移動とワイヤーが一直線になるタイミングでの停止は基本ですが、可能な限り半押しでの微速操作を活用し、慎重かつ繊細な操作を心がけましょう。
安全かつ効率的なクレーン作業を行うためにも、機械の特性を理解し、練習やシミュレーションを積み重ねることが最良の対策です。
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