映画やアニメに登場するようなジェットエンジン車に憧れを抱いたことがある人は少なくないでしょう。しかし、現実の道路ではそのような車はまず見かけません。なぜ現代社会ではミニジェットエンジン式の自家用車が存在しないのでしょうか?その理由を技術面と法規制の観点から詳しく解説します。
ジェットエンジン車とは何か?
ジェットエンジン車とは、従来の内燃機関(ガソリンエンジンなど)ではなく、航空機に使われるようなターボジェットエンジンなどを動力源とする車両を指します。
一部のレーシングカーや特殊用途の車両で試作された例はありますが、それらは一般道走行用ではなく、特殊なイベント用や研究目的に限定されてきました。
技術的な課題:サイズと効率
ジェットエンジンは高出力を発揮する一方、構造が大きく、小型化が非常に困難です。また、排熱が非常に高温で、近距離に人がいられないほどの熱風を後方に放出するという性質もあります。
さらに、燃費効率は内燃機関と比べて極めて悪く、数キロの走行でガソリンを数十リットル消費することもあるため、日常の足には現実的ではありません。
騒音と安全性の問題
ジェットエンジンは音も非常に大きく、住宅街や市街地では騒音規制に明確に抵触します。加えて、車体が超高温の排気を放出することから、周囲の歩行者や他車両にとって極めて危険です。
そのため、公道走行には安全基準を満たせず、ナンバープレートの取得も不可能です。
法規制:道路運送車両法などの壁
日本では、車両が道路を走るためには道路運送車両法の保安基準を満たす必要があります。その中にはエンジンの種類や騒音、排ガスなど多岐にわたる基準が存在します。
ジェットエンジン車はこれらのほぼすべてに抵触し、車検を通ることができません。仮に通過したとしても車両登録自体が認められない可能性が高いのです。
実際の例:試作車両とモータースポーツ
過去には「Thrust SSC」などのジェットエンジン車が地上最速を競う試みに使用されましたが、いずれも専用の試験場でしか走行できません。
アメリカでは「ジェット・ドラッグスター」などのイベント車両もありますが、いずれも公道走行不可で、運搬もトレーラーによって行われます。
今後の可能性はあるのか?
理論的には電動タービンやハイブリッド方式などにより、安全で静音なタービンエンジン車が開発される可能性はあります。
しかし、現時点では環境面・コスト面・安全性の全てにおいてガソリン車や電気自動車に大きく劣るため、一般化する兆しは見られません。
まとめ
ミニジェットエンジン式の自家用車が公道で存在しない理由は、技術的課題、安全性、騒音、そして法規制の壁によるものです。映画の世界のような車は魅力的ですが、現実にはまだまだ高いハードルがあることを理解しておきましょう。
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