運転免許試験では、「いじわる問題」とも思えるような設問が登場することがあります。その中でもよく混乱を招くのが、“横断歩道の手前で停車中の車を追い越してよいか”という場面です。この記事では、法律上の正解とその背景を解説しつつ、実際の道路での判断に役立つ知識をお届けします。
横断歩道の手前での「一時停止義務」とは
道路交通法第38条において、歩行者が横断歩道を渡ろうとしているとき、または渡っているときは車両は一時停止しなければなりません。さらに、その横断歩道の手前に車両が停止している場合、「その車両を追い越してはならない」とも規定されています。
つまり、横断歩道の手前で停車中の車がある=その先に歩行者がいるかもしれないという前提で、後続車も一時停止する必要があります。たとえ前方の車が単に停まっているように見えても、それが横断歩道の手前であれば、慎重に確認する必要があるのです。
「駐停車禁止」と「一時停止義務」は別の話
横断歩道の前後5メートルは、確かに駐停車禁止区域です(道路交通法第44条)。しかし、これは「長時間の停車」や「駐車」が対象であり、バスが一時的に乗降のために停止することや、渋滞などで一時停止している車などは、この規定の対象外です。
また、仮に違法駐車であっても、そこに車がいる以上「見通しが悪くなる」ことは変わらず、歩行者が飛び出す危険性もあるため、後続車は一時停止して安全を確認する義務があるという点は変わりません。
ひっかけ問題に見えて、実は合理的なルール
一見すると「ひっかけ問題」ですが、実際には歩行者の安全を守るための合理的な規定です。特に子どもや高齢者は、前の車の陰から突然飛び出すこともあります。そのため、追い越す前に一時停止をし、安全確認を徹底するという運転姿勢が求められています。
たとえば、ある事例では、横断歩道手前でバスが停車しており、後続の車がその横を徐行で通過した際、子どもが飛び出してきて接触する事故が発生しました。運転者は「バスの陰に人がいたとは思わなかった」と述べましたが、裁判では「安全確認義務を怠った」として過失が認定されています。
教習所でも強調される「安全確認」の基本
教習所の学科教本や模擬試験では、こうした「停車中の車両の横を通るときの危険」について繰り返し強調されています。横断歩道手前での一時停止義務や、見通しの悪い場所での徐行・停止の必要性は、単なる暗記ではなく実際の運転で非常に重要な判断ポイントとなります。
もしも運転免許の試験で誤答してしまった場合は、「ルールを知っていれば正解できた問題」ではなく、「知っておくことで事故を未然に防げる問題」と捉えると理解しやすくなります。
まとめ:ルールは“いじわる”ではなく“思いやり”の裏返し
横断歩道の前で停まっている車の横を通るときは、たとえ徐行であっても一時停止して安全を確認することが法律で求められています。これは「見えない歩行者の命を守る」ための重要なルールです。
免許試験の問題は時にいじわるに感じられるかもしれませんが、裏を返せばそれだけ大切な交通ルールであるということ。覚えるだけでなく、「なぜそのルールがあるのか」を理解することが、安全運転の第一歩です。
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