ネット上では「こういう車があったらいいのに」という投稿に対して「需要がないから存在しない」といった反応がつくことがあります。しかし、しばらくするとそのような車が実際に市場に登場することも少なくありません。一見矛盾しているように思えるこの現象には、製品開発の長期的な視点と市場戦略が関係しています。
「需要がない」と言われる理由とは
一般的に「需要がない」と判断されるのは、過去の販売実績やマーケット調査による結果です。特定のジャンルや形状の車種が以前売れなかった場合、次回の製品企画からは外されやすくなります。また、インターネット上の意見は一部の声に過ぎず、企業はより大規模なデータに基づいて判断を下すため、乖離が生じることがあります。
たとえば「コンパクトな3ドアスポーツカー」や「MT車」は、かつては人気だったものの、近年では販売数が少ない傾向にあり、“需要なし”とされがちです。
「需要が生まれる」のではなく「作る」戦略
自動車メーカーは単に現存の需要に応えるだけでなく、新たな需要を創り出すことも目指しています。新しいライフスタイルやトレンドの変化、あるいはテクノロジーの進化によって、今までなかった選択肢を提供することもあります。
たとえば、軽自動車ベースのSUVや、スライドドア付きスポーツミニバンといったコンセプトは、従来なかった“利便性と個性”の融合で支持を集めました。
開発期間と情報のズレ
自動車の開発には一般的に3〜5年、長いものでは10年近くかかることもあります。つまり、ある車が世に出るころには、その企画は数年前にスタートしていた可能性が高く、知恵袋などでアイデアが出た時点ではすでに開発が進んでいたということもあり得るのです。
このタイムラグが「需要がないはずなのに発売された」と感じさせる原因の一つです。
マーケティングとプロトタイプテストの影響
メーカーは市場の“声”を聞いていないわけではありません。SNSや知恵袋、YouTubeのコメント欄まで分析対象に含めていることもあり、アイデアレベルの意見が実際の試作や企画会議に影響を与えることもあります。
また、モーターショーでプロトタイプとして披露された車が反響を呼び、そのまま市販モデルに発展するケースもあります。
近年の事例:スズキ「ジムニー5ドア」やトヨタ「GR86」
スズキのジムニー5ドアモデルは、かつて「誰が買うの?」と揶揄されたこともありましたが、アウトドア需要の高まりと相まって、インド市場から火が付き、日本でも話題となりました。
またトヨタのGR86は、スポーツカー離れが進む中で復活したFR・MT車であり、「絶対売れない」と言われながらも熱狂的な支持を集めています。
まとめ:需要は“静かに”存在していることも
表面上「需要がない」と言われていても、それが潜在的なものであったり、タイミングや発信力次第で顕在化するケースも多くあります。ユーザーの声は必ずしも無視されているわけではなく、時に開発のヒントになり、新たな市場を切り開く力となります。もしあなたが「こんな車が欲しい」と思ったなら、その意見は未来の開発に影響を与えるかもしれません。
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