雨天時の運転中にABSが作動した後、ブレーキの踏みしろが突然深くなるという現象は、一部の車種でまれに発生します。特にスズキ・ワゴンR(MH23S型)のような軽自動車でも、ABSとブレーキ油圧制御の関係で似たような症状を報告するユーザーがいます。今回はその原因や対処法について詳しく解説します。
ABS作動後に踏みしろが深くなるのはなぜ?
ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)は、急ブレーキ時の車輪のロックを防ぐために瞬時に油圧制御を行う安全装置です。しかし、制御の過程で油圧が一時的に偏ったまま戻らなくなると、ペダルの感触に異変が生じる場合があります。
特にABSユニット内部のソレノイドバルブやリターンポートの動作に遅れや詰まりが生じると、油圧がスムーズに戻らず、踏みしろが深くなるという症状が出ることがあります。
再度ABSを作動させたら直る理由
一度ABSが作動した状態でバルブが中途半端に閉じたままになると、ブレーキ圧が正常に戻らないことがあります。しかし、その後に再度ABSを作動させることでバルブの動きが復帰し、結果として油圧バランスがリセットされ、正常な踏みしろに戻ることがあります。
これは一種の「油圧ライン内の詰まりを自動的に解消した」ような動作であり、必ずしも恒久的な解決とは言えません。
考えられる主な原因とメンテナンスチェックポイント
- ABSアクチュエーターのバルブ固着:年式が古くなると内部の電磁弁の動きが悪くなる
- ブレーキフルードの劣化:吸湿性が高いため、交換サイクルを過ぎると性能低下
- マスターシリンダーの作動不良:シールの摩耗などで油圧保持力が低下する
- エア混入:整備時や長期間の使用でブレーキラインに空気が混入
ブレーキは命に関わる重要な安全装置です。症状が一時的に改善したとしても、必ず点検を受けることをおすすめします。
ブレーキ系トラブルの実例紹介
事例①:MH23SワゴンR 走行距離12万km
ABS作動後に踏みしろが深くなる症状が3回発生。ブレーキフルードを交換したところ、以降症状は出ていない。
事例②:スイフトZC11S
ABSユニット交換歴あり。ABS作動後にペダルタッチが不安定になったが、点検でマスターシリンダー内部シールの劣化が判明し、部品交換で完治。
ブレーキ関連のセルフチェックと対処法
緊急時以外でも、以下の点をセルフチェックしておきましょう。
- ブレーキフルードの色が黒ずんでいないか(透明~薄黄色が正常)
- 踏み始めがスカスカしないか
- 異音(エア噛みの「シュッ」音)やパッド鳴きがないか
- 1年~2年に1度はフルード交換
ちょっとした異変でも早めに対応することで、大きな故障や事故のリスクを避けられます。
まとめ:ABS作動後のブレーキ異常は油圧系統のサインかも
ワゴンRなどで見られるABS作動後の踏みしろ異常は、内部の油圧系統に関係しているケースが多く、単なる「気のせい」ではありません。再発しない場合でも、早めの点検やメンテナンスが安心・安全につながります。
「再度ABSを効かせたら直った」は一時的な解消かもしれません。安心して乗り続けるために、整備工場でのチェックを検討しましょう。
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