自動車業界ではよく耳にする「OEM車(Original Equipment Manufacturer)」という言葉。これは、ある自動車メーカーが他社ブランド向けに車両を製造・供給するビジネスモデルです。この記事では、OEMの仕組みや、ダイハツとスバルの事例からOEMのメリット・デメリット、収益構造や販売事情について詳しく解説します。
OEM車とは何か?基本的な仕組みを解説
OEM車とは、自動車メーカーA(たとえばダイハツ)が設計・製造した車を、メーカーB(たとえばスバル)が自社ブランドとして販売する仕組みです。見た目は異なっていても、ベース車両は同じであることが多く、バッジや一部のデザインのみが変更されています。
たとえば、ダイハツ「ムーヴ」がベースとなり、スバルが「ステラ」として販売するのが典型的なOEMの例です。これは両社の協力関係によって成り立っています。
OEMでお金の流れはどうなっている?ダイハツは儲かるのか
OEMのビジネスモデルでは、供給元(例:ダイハツ)は、販売先(例:スバル)に対して、1台あたり一定額で車両を供給します。この金額には原価に加えて利益が含まれており、ダイハツにとってはスケールメリットを活かせる収益源になります。
実際の支払金額は非公開ですが、製造コスト+一定の利益マージンを上乗せした額がスバルに請求される仕組みです。スバルはそれを自社ディーラーで販売し、自社の利益を上乗せして販売価格を決定します。
OEM受託側(スバル)が売れるとダイハツは悔しい?
OEM元よりもOEM受託側の方が売れるケースもあります。たとえば、販売チャネルが強いスバルがダイハツ製のOEM車を多く売った場合、スバルが利益を多く得ることもあります。
しかし、ダイハツにとっては「販売台数が伸びる」ことそのものが生産効率や知名度の向上に繋がるため、むしろ歓迎されるケースが多いです。OEMは「共存共栄」の関係が基本となっており、競合ではなくパートナーシップである点がポイントです。
OEMのメリット・デメリットとは
供給元のメリット:
- 生産台数が増え、スケールメリットが出る
- 自社ブランドでは売れにくい層へのアプローチが可能
- 設備投資の回収が早まる
受託側のメリット:
- 開発費を抑えてラインアップ拡充ができる
- 市場に対する即応力が高まる
- 軽自動車やコンパクトカー市場への参入がしやすい
一方で、ブランドの独自性が薄れるリスクや、価格競争による利益率低下も懸念されます。
実例:ダイハツとスバルの「ムーヴ/ステラ」
スバル「ステラ」は、ダイハツ「ムーヴ」のOEM供給車であり、内外装を若干変更して販売されています。両車の違いはエンブレムやフロントマスク程度で、基本性能や装備はほぼ同じです。
このように、OEM車は「選択肢の多様化」にも繋がっており、消費者にとってもメリットのある存在と言えるでしょう。
まとめ:OEMは競争ではなく“共存”の戦略
自動車のOEM供給は、販売戦略の一環として極めて重要な位置を占めています。供給元が儲かり、受託側もブランドを広げられる「Win-Winの関係」であるため、売れ行きの良し悪しよりも、全体として市場が広がることが大切です。
OEM車を理解することは、自動車業界の動向やメーカーの戦略を読み解く上でも非常に役立ちます。次に購入する車がOEM車だったとしても、それは質や信頼性の証と言えるかもしれません。
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