中古車を購入した直後に重大な不具合が見つかり、返品を申し出たにもかかわらず「一部費用は返金不可」と言われて困っている方は少なくありません。特に全国展開する大手販売店で購入した場合、返品保証制度の範囲内での対応にとどまるケースもあります。本記事では、こうした状況で「車両本体価格以外の費用」まで返金を求められるのかどうか、法的視点や交渉の実例を交えて解説します。
納車当日からの不具合は「契約不適合責任」の可能性
民法第562条では、売買契約における「契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)」が定められており、売主が提供した物(この場合は車)が契約内容と異なる状態だった場合には、買主は解除や損害賠償を求めることができます。
たとえば、納車当日に通常走行できないレベルの不具合(ギア不良・異音・ETC故障など)があれば、これは「通常の性能を満たしていない=契約に適合していない」とされ、返品や返金請求の根拠になります。
返品保証制度との違いに注意
ガリバーなど大手では独自の「返品保証制度」が設けられていますが、これは任意制度であり、主に「顧客都合の返品」を想定したものです。
つまり、納車直後の重大な不具合は返品保証とは別の「契約不適合」による返金対象であると主張できます。返品保証制度だけに話を限定されると、車両本体価格以外の諸費用(登録費用、保証料、整備費など)が返ってこないケースが多く、注意が必要です。
返金対象になり得る費用一覧
項目 | 返品保証 | 契約不適合(法的責任) |
---|---|---|
車両本体価格 | ◯ | ◯ |
登録手数料 | × | ◯(例外あり) |
あんしん保証パック | × | ◯(未使用分) |
整備費用 | × | ◯ |
ETC取り付け費 | △(交渉次第) | ◯(故障品の場合) |
納車時点で故障していたETCや整備不良で走行に支障が出ている場合には、「対価に見合う価値が提供されていない」と主張する根拠になります。
交渉の進め方:冷静かつ証拠を整えて主張を
返金交渉を進めるには、口頭だけでなく書面(またはメール)で履歴を残すことが重要です。
- 納車直後に発生した不具合の内容(写真・動画・修理見積)
- 契約書に記載された内容と実際の車両の差異
- 保証内容に含まれているかどうか(ETCや整備)
- 「この状態であれば契約しなかった」という主張の明確化
また、対応を求める場合は「返品保証制度の範囲ではなく、契約不適合による解除と全額返金を求める」と明確に伝えることが重要です。
実例:返金が認められたケース
過去には以下のような事例があります。
40代男性が中古車(年式10年以上)を購入し、納車2日後にエンジン異常が発覚。販売店が返品保証のみを提示したが、弁護士を通じて契約不適合を主張し、車両本体+登録料+納車整備料を含む全額返金が実現。
また、ETC故障に関しても取り付け代+機器代が返金された事例もあります。
弁護士や消費生活センターの活用も視野に
交渉で埒が明かない場合は、消費生活センターへの相談や弁護士への無料相談を検討しましょう。
特に、契約不適合責任による解除は法律上の根拠があるため、専門家の意見をもとに文書で請求することが効果的です。自動車公正取引協議会への申し立ても一つの手段です。
まとめ:返品は「保証」よりも「契約不適合」がカギ
納車直後の深刻な不具合により返品を希望する場合、以下のポイントを押さえましょう。
- 任意の「返品保証」ではなく「契約不適合責任」で返金を主張
- 登録料や保証費用も返金対象となり得る
- 証拠を揃え、冷静に書面で交渉する
- 交渉が困難なら第三者機関や法的手段を活用
中古車は慎重な検討が必要ですが、不具合があったときには「泣き寝入りしない」知識と行動がトラブル解決の鍵となります。
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