旧車やチューニング車において、点火系の安定性はエンジン性能や始動性に直結する重要な要素です。特にフルトランジスタ点火方式では、一次側の電源品質が影響しやすく、バッテリーからの直接配線(通称「バッ直」)を検討する人も少なくありません。この記事では、一次側の電流の流れや電圧降下の理由、バッ直に最適なリレーの選び方などを具体的に解説します。
フルトランジスタ点火方式とは?
フルトランジスタ点火方式は、従来のポイント式と異なり、機械的な接点を使わずにトランジスタスイッチで点火制御を行う方式です。これにより、メンテナンス性が高く、点火時期の精度も向上します。
一次側では、バッテリー電源がイグニッションスイッチを経てコイル一次巻線へ流れ、点火信号に応じてトランジスタがオン・オフを切り替えることで二次側へ高電圧が誘導されます。
一次側の電圧降下の原因
点火一次側で電圧降下が発生する主な原因は、長い配線経路・接点の劣化・ヒューズブロックの電気抵抗などです。バッテリー端子間電圧と実際にイグニッションコイルに供給される電圧に0.7V以上の差があると、点火性能に影響が出る可能性があります。
特にエンジン始動時や高負荷時には電圧が一層低下するため、対策が求められます。
バッ直(バッテリー直結)のメリットと注意点
バッ直とは、バッテリーの+端子からリレーを介して直接イグニッションコイルなどに電源を供給する方法で、電圧降下を最小限に抑えることができます。結果として点火性能が安定し、始動性や高回転時のレスポンス向上も期待できます。
ただし、常時電源を使うためリレーやヒューズの適切な管理が必須です。また、純正配線を活かしつつリレーの信号線として活用する設計が一般的です。
無接点リレー(ソリッドステートリレー)は必要か?
フルトランジスタ点火において、点火タイミングごとに電流を高速でオン・オフするため、「無接点リレーでないと耐久性がもたないのでは?」と考える人もいますが、実際には通常のリレー(メカニカルタイプ)でも問題ありません。
理由は、リレーはあくまで電源供給のスイッチング用であり、点火制御のスイッチングはトランジスタが担っているためです。したがって、市販の20A以上対応の信頼性の高いリレーを使用すれば、充分に対応可能です。
実例:バッ直配線+リレー構成の一例
以下は実際に使用されている構成例です。
項目 | 内容 |
---|---|
電源元 | バッテリー+端子 |
リレー | Bosch製汎用リレー(30A) |
信号線 | イグニッションON時に通電する純正線 |
出力先 | イグニッションコイル一次側 |
ヒューズ | 10Aインラインヒューズ |
このようにバッ直によって安定した電圧が供給され、エンジンの始動性が明らかに改善されたという報告も多くあります。
まとめ:リレーを活用したバッ直は効果的だが設計が重要
フルトランジスタ点火方式における一次側の電圧降下は、リレーを活用したバッ直配線によって効果的に対策可能です。無接点リレーである必要はなく、しっかりと設計・配線・保護(ヒューズ)を施せば、一般的なメカニカルリレーで充分対応可能です。
DIYでの配線施工は、必ず回路図を作成し、熱や振動への対策も意識しましょう。電装系のアップグレードは、車の信頼性と性能を大きく左右する重要な要素です。
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