リトルカブ(キャブレター仕様)はシンプルな構造ながら、年式によってはバッテリーや電装系のトラブルに悩まされることもあります。特に「バッテリーを充電したのにセルが回らない」「キックで始動はできるが一部の灯火類しか点かない」といった症状は、複数の原因が考えられます。本記事では、キャブ車特有の電装構成を踏まえつつ、原因の切り分けと対処法を詳しく解説します。
まず確認すべきはバッテリーの状態
セルが回らない最大の原因は、バッテリーの電圧不足または劣化です。たとえ充電器で「充電完了」と表示されていても、実際に負荷をかけたときに電圧が落ちてしまう“内部劣化”のケースは少なくありません。
以下の手順でチェックしましょう。
- エンジン停止状態で電圧を測定(12.5V以上が目安)
- キーON状態での電圧(12Vを大きく下回るなら要注意)
- セルボタンを押した瞬間の電圧(9.5V以下なら交換推奨)
このように、電圧測定は「負荷時の電圧低下」がポイントです。電圧が安定しない場合は、見かけ上の充電が完了していても実用不可の可能性があります。
ヒューズや配線のチェックも重要
バッテリーが正常でも、電力がセルモーターに届かない場合は、ヒューズの接触不良や断線、配線の腐食が原因として考えられます。
特にリトルカブでは、メインヒューズの劣化(端子の錆びなど)により電流が流れにくくなることがあります。ヒューズ本体が切れていなくても、差し込み部分の導通が悪いと電装系に不具合が出るため、テスターで導通チェックを行うと確実です。
セルスターターリレーとスタータースイッチの可能性
バッテリー・ヒューズに異常がなく、セルボタンを押しても無反応であれば、セルリレー(スターターリレー)やスタータースイッチ自体の不具合が疑われます。
セルリレーはバッテリーからセルモーターへ電流を流すための中継装置です。ここが壊れていると、セルボタンを押してもリレーが作動せず、モーターが回りません。リレーの作動音(カチッという音)があるかどうかを確認し、音がしなければリレー交換を検討してください。
キック始動で点灯する灯火類から見るヒント
キック始動後にヘッドライトやテールランプが点灯するのは、リトルカブのキャブ仕様車が“交流発電”によってエンジン回転時に発電し、灯火類へ直接供給しているからです。
一方、セルモーターやウインカー、ホーンなどは直流(バッテリー電源)で駆動するため、バッテリーが死んでいれば当然作動しません。この違いを理解しておくことで、原因の切り分けがしやすくなります。
実例:スーパーナット充電器を使ったがセルが回らなかったケース
あるユーザーは、スーパーナット製の充電器でバッテリーを満充電にしたにもかかわらず、セルが一切作動せず、キック始動後のみ一部灯火類が点灯。電圧を測ると静止時は12.6Vあったものの、セル操作で一気に8.9Vまで低下。
→ このケースでは、バッテリー内部の容量劣化(寿命)が原因で、新品バッテリーに交換したところセルもウインカーも正常に作動するようになりました。
まとめ:セルが回らない時は「電圧+接点+リレー」を順に確認
リトルカブ(キャブ仕様)でセルが回らない、灯火類の一部しか点灯しないといった症状が出た場合は、次の3点を優先的に確認しましょう。
- バッテリー電圧と負荷時の状態
- ヒューズ・端子・アースの接触不良
- セルリレーやスタータースイッチの不具合
バッテリーが“充電されたように見えても”実際には機能していないケースは多いため、テスターによる電圧測定が何よりも有効です。必要に応じてバッテリーの交換を検討し、快適な始動環境を整えてください。
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