1960年代に登場したホンダN360は、日本の軽自動車史において非常に重要なモデルです。その特徴の一つが、当時としては珍しい「チェーンドライブ方式(チェーン駆動)」を採用していた点です。この記事では、その仕組みや採用された背景、バイクとの違いについて詳しく解説します。
ホンダN360とはどんな車だったのか?
ホンダN360は、1967年に登場した軽自動車で、軽量コンパクトながら高性能エンジンを搭載し、当時の大衆に手の届く価格帯で人気を博しました。
最大の特徴は、バイクメーカーとしての技術を応用したエンジン設計や駆動系にあります。車体重量はわずか500kgほどで、空冷直列2気筒エンジンと前輪駆動という構成が注目されました。
チェーン駆動ってどんな仕組み?
一般的に自動車では、トランスミッションからドライブシャフトを介してタイヤに駆動力を伝えます。しかし、N360の初期モデルでは、エンジンから前輪へチェーンで駆動力を伝達する構造が採用されていました。
この構造は、オートバイのリアホイールを駆動するチェーンに非常に近いもので、整備性が高く軽量な利点がありました。ただし、メンテナンスが必要な点やチェーンの耐久性が問題とされ、後期型では改良されていきました。
なぜホンダはチェーンドライブを採用したのか?
ホンダがこの方式を採用した背景には、当時の技術資産と製造コストの低減があります。ホンダはオートバイメーカーとして長年チェーンドライブに精通しており、それをそのまま応用することで技術の流用が可能でした。
また、シャフト駆動よりも部品点数が少なく、車両価格を抑える効果も見込まれていました。
バイクのチェーンと何が違うの?
一見似た構造のように思えますが、自動車用チェーンドライブは密閉構造になっており、チェーンの露出はありません。これは防塵・防水対策のためで、バイクのようにむき出しではありません。
さらに、駆動力が高いため、バイク用よりも太く強固なチェーンが使われていました。実際の動作も静かで、乗っている分にはチェーン駆動とは気付かないほどです。
現在では使われていない?
チェーンドライブは軽量かつコスト面でメリットがありましたが、メンテナンス性や耐久性に課題があったため、後年にはギアやシャフトを使う方式に変わっていきました。
現在では、自動車でチェーン駆動を採用している例は極めて稀であり、N360のような設計は歴史的にも非常にユニークといえるでしょう。
まとめ:ホンダN360のチェーンドライブは挑戦の象徴だった
ホンダN360のチェーンドライブ方式は、当時としては非常に独創的な技術でした。バイクメーカーならではのアプローチで生まれたこの構造は、軽量・低コストというメリットを活かしつつ、乗用車としての新しい可能性を切り開いたものといえるでしょう。
現在では見ることのない方式ですが、こうした試行錯誤が現在のホンダ車の信頼性の礎になっているのです。
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