クルマ好きの間でしばしば話題になる「タックイン」。特に前輪駆動(FF)車では過去に見られた特徴的な挙動として知られていますが、現代の市販FF車ではその傾向が少なくなったと言われます。この記事では、なぜ現代のFF車でタックインが起きにくくなっているのか、安全性や設計思想の進化とともに解説します。
タックインとは何か?基本の挙動を理解する
タックインとは、FF車で高速コーナリング中にアクセルオフすることで前荷重が増し、リアの接地力が抜けて車体が内側に巻き込むように旋回する現象です。
特にサスペンションが柔らかく、前後重量配分がフロント寄りの車ではこの挙動が強く出やすく、旧型の軽自動車やコンパクトカーではタックインが顕著に感じられることもありました。
現代FF車ではなぜタックインが減ったのか?
現在販売されている多くのFF車は、シャシー剛性の強化、電子制御の進化、そしてサスペンション設計の改善により、挙動の安定性が大きく向上しています。
とくにESC(横滑り防止装置)や車両挙動制御システムの搭載により、タックインのような挙動が出る前に介入が入り、姿勢を自動で補正します。結果として、ドライバーが意図的に荷重移動を起こしても、以前ほど顕著なタックインにはなりにくくなっています。
タックインが体感できるFF車の実例
それでもなお、一部のモデルではタックインの気配を感じることがあります。たとえば、スポーティなチューニングが施されたFFモデルでは、ドライバーの操作に対して鋭く応答する設計がなされているため、状況次第では軽いタックインを味わえることがあります。
- ホンダ フィットRS(旧型)
- スズキ スイフトスポーツ(ZC32Sなど)
- トヨタ ヴィッツGRMN(限定車)
これらの車種は「操る楽しさ」を意識して開発されており、限界領域では古典的なFF挙動を部分的に体感できます。
現代のシャシーと足回り技術の進化
車両の安全性が重視される昨今、メーカーは中立〜アンダーステア方向への挙動づくりを意識しています。これにより、不意にリアが巻き込んでスピンするような危険を避ける設計思想が基本です。
特にハイブリッド車や電動パワステ搭載車では、ドライバーが意図しない急激な動きが制限されるため、意図的にタックインを再現するのはかなり難しくなっています。
タックインを味わいたい人への選択肢と注意点
もし「タックインを意図的に味わいたい」と考えている場合、安全なサーキットやジムカーナ環境で、適した車両を用いることが大前提となります。
公道での試みは非常に危険であり、急ブレーキやステア操作によって後続車両との事故リスクも高まります。楽しみたいなら、安全対策が施された場で、整備された車両とスキルを持った上で行いましょう。
まとめ:現代のFF車では安全性重視によりタックインは抑えられている
かつてのFF車で見られたタックインは、車両設計や制御技術の進化により、現代ではほとんど体感できなくなっています。これはドライバーにとっても安全で安定した運転を可能にする一方で、昔ながらの「操る楽しさ」を求める層には少し物足りない要素かもしれません。
クルマ選びや走行スタイルに応じて、自分が求める挙動に適した車両を選ぶことが、満足のいくカーライフにつながると言えるでしょう。
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