高性能化を目指すチューンドカーの世界では、エンジンの保護とパフォーマンス向上のためにオイル管理の強化が欠かせません。中でもオイル容量の増量やオイルクーラー導入は定番のチューニングですが、純正オイルパンへの加工、特に穴あけ・溶接を伴う改造にはリスクと工夫が必要です。この記事では、オイルパンにステンメッシュホースを溶接し、オイルポンプで圧送する構成の安全性や注意点について解説します。
オイルパンに穴を開ける理由と方法
チューンドカーにおいては高回転域での走行が多くなるため、エンジンオイルの量が足りないと油温上昇や油圧低下によりエンジントラブルを招く可能性があります。その対策として、オイルパンに追加穴を設けてオイルラインを増設する手法が取られることがあります。
このとき、溶接によるホースジョイントの取り付けや、ネジ山付きのフィッティングを使用する方法が一般的です。いずれにせよ、密閉性や強度の確保が最重要となります。
溶接加工のメリットとリスク
溶接による加工は、一体感があり漏れのリスクが少ない反面、素材や施工の技術力によって耐久性が大きく左右されます。純正のオイルパンがアルミ製であれば、TIG溶接など高度な技術が必要です。
また、溶接による熱影響でオイルパンの歪みや応力集中が起きることもあるため、必ず信頼できるショップに依頼するのが鉄則です。
オイル圧送とクーラー構成のポイント
オイルポンプを用いてオイルパンからオイルクーラーへ圧送するシステムは、エンジン保護に大きく貢献します。以下の構成が一般的です。
- オイルパン → ホース取り出し口(加工)
- 外部ポンプ → オイルクーラー
- オイルブロック経由でエンジンへ戻す
ただし、ポンプ選定やホース径・流量、戻り側のバランスが適切でないとオイル流量不足や油圧の異常につながることもあります。
代替手段としてのバッフルプレートやオイルキャッチタンク
リスクの高いオイルパン加工を避けたい場合は、オイルパン容量の大きいアフターマーケット製パーツへの交換や、バッフルプレート装着で油圧安定性を確保する手もあります。
また、オイルキャッチタンクを併設することで、ブローバイガスの処理とオイル管理の両立も可能になります。
実際のチューニング事例
例えば、あるドラッグレース仕様のSR20エンジンでは、アルミ製オイルパンにANフィッティングを溶接し、シェル型オイルクーラーへ直接圧送するシステムが組まれていました。パイプの根本にはスプリングホースクランプを使用し、振動対策も講じられていました。
しかし同様の車両で、ホースの取り付けが緩かったためにオイル漏れを起こし、エンジンブローにつながった例も報告されています。
まとめ:安全性と施工技術を最優先に
オイルパンに穴を開けてオイルラインを増設するチューニングは、高い効果が得られる一方で、施工ミスが命取りになる繊細な作業です。
- 溶接加工は確かな技術力のある専門業者に依頼を
- ポンプやホース径などの設計バランスが重要
- 信頼性重視なら汎用品よりも専用設計パーツを選ぶ
愛車の性能を引き出すためには、安全性を損なわないチューニング設計が何よりも大切です。
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