エンジンのクランクケースを組み立てる際、液体ガスケットの使い方一つでオイル漏れの有無が決まるほど、非常に重要な工程です。しかしネット上では「直接塗る」「指でならす」「乾かすべきか」など様々な意見があり、初心者は迷ってしまいます。この記事では、液体ガスケットの正しい塗り方やタイミング、はみ出しの許容範囲、さらに注意点まで、わかりやすく解説します。
液体ガスケットの正しい塗り方とは?
液体ガスケットは、合わせ面の密着性を高めるために使用されます。塗り方には以下の2つの主流があり、それぞれメリットがあります。
- 直接チューブから塗布: チューブの先端から均一なビード状に塗り、広げずそのまま組み付ける方法。ムラや気泡が入りにくいのが特徴です。
- 指やヘラで薄くのばす: 表面全体に薄く塗り伸ばして密着を高める。広い面積や複雑な形状のケースには有効です。
エンジンチューナーの間では「ビード状に均等に塗布」が主流。塗布幅は約2〜3mm程度でOKです。塗りすぎると余剰ガスケットが内部に入り、オイル通路をふさいでしまう恐れもあります。
塗ってからケースを合わせるまでの時間
液体ガスケットは種類により硬化速度が異なります。一般的なシリコン系(例:スリーボンド1215など)の場合、塗布後は5分以内に組み付けるのが理想です。時間が経ちすぎると表面が硬化してしまい、接合力が落ちる可能性があります。
「少し乾かしてから合わせた方が密着する」といった情報も見られますが、これはシール剤によって大きく異なるため、必ず使っている製品の説明書に従うようにしましょう。
液体ガスケットのはみ出し、どこまでOK?
ケースを合わせた際に、液体ガスケットが外に少しはみ出すのは正常です。むしろまったくはみ出さない場合は塗布量が少なすぎる可能性もあります。
目安としては、ケース外周から1mm前後の「薄い線状」でにじみ出るくらいがベスト。内側にはみ出すと、オイルラインに入り込む可能性があるため、組み付け後にはみ出しを確認できる場合は慎重に拭き取っておくと安心です。
組み立て時に気をつけたいその他のポイント
液体ガスケット以外にも、クランクケースの組み立てでは次の点にも注意が必要です。
- 接合面は脱脂してから使用: パーツクリーナーなどで必ず脱脂を行い、油分がないことを確認します。
- ボルトは規定トルクで締める: 一気に締めず、対角線状に少しずつ締めることが重要です。
- 古いガスケットの残りは完全に除去: スクレーパーや真鍮ブラシで、前のガスケットのカスは完全に落としましょう。
また、組み付け後に数時間から一晩は置き、ガスケットが完全に硬化するまでエンジンオイルや冷却水を入れるのは控えるとトラブル防止になります。
まとめ:正しい手順と丁寧さが仕上がりを決める
クランクケースの組み立てにおける液体ガスケットの扱いは、初心者にとって迷いどころですが、基本を押さえれば十分対応できます。チューブから直接均一に塗り、早めに組み付ける。はみ出しは控えめにし、内側への侵入は避ける。そして何より、脱脂や締め付けトルクなどの基本を忘れないこと。
この工程を丁寧に行えば、長期的にトラブルの少ないエンジンに仕上げることができます。慎重に、そして自信を持って取り組んでみてください。
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