個人間での自動車売買は、ディーラーや中古車販売店を介さない分、自由度が高くコストも抑えられますが、そのぶん手続きや責任の範囲については慎重に判断する必要があります。中でも「自賠責保険を譲渡するか解約するか」は迷いやすいポイントです。本記事では、売却時の自賠責保険の取り扱いについて、リスクや選択肢を交えて解説します。
自賠責保険とは?譲渡時に残期間がある場合どうなる?
自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)は、車を運行する際に必ず加入しなければならない強制保険です。加入者情報(住所・氏名・車両番号)が記載されており、保険の名義変更という手続きは存在しません。
つまり、車を売却しても、契約者情報は元の持ち主(売主)のままとなります。そのため、残期間のある自賠責を新しい所有者が使い続けることは制度上できてしまいますが、正式な契約上の責任は売主に残ることになります。
そのまま渡す場合に考慮すべきリスク
買主が「仮ナンバーで持ち帰りたいから、残った自賠責を使いたい」と申し出てくるケースもあります。しかし、以下のようなリスクがあるため注意が必要です。
- 事故発生時に、契約者である売主の情報が関係機関に残る
- 買主がそのまま乗り続けた場合、名義と保険契約が一致せず保険無効になる可能性
- 万が一のトラブル時に、売主の個人情報(住所・氏名)が第三者に渡る
このような事態を避けるためにも、売却と同時に自賠責保険を解約するというのが安全な選択肢になります。
自賠責保険を解約する場合の流れ
売却後すぐに自賠責保険を解約するには、以下の書類が必要です。
- 自賠責保険証明書(原本)
- ナンバープレート返納証明書(抹消登録証明書)
- 本人確認書類(運転免許証など)
- 印鑑(保険会社によっては不要な場合も)
軽自動車・普通車ともに、ナンバーの返納が先に行われていなければ解約できないため、買主側で名義変更や一時抹消登録などが済んでいる必要があります。
売買時におすすめの対応方法
トラブル回避のためには、以下のような対応が望ましいです。
- 自賠責保険は原則として解約し、残期間に応じた返戻金を受け取る
- 買主には「仮ナンバー申請のための一時的な保険加入」を勧める
- 契約書に「自賠責は解約済みであり、以降の保険は買主責任で手配」と明記
どうしても残った保険をそのまま使いたいという買主に対しては、「自己責任で使用し、売主に一切の責任は発生しない」ことを文書で取り交わすのが最低限の自衛策となります。
実際に起こりうるトラブル事例
過去には、売主が解約せずに保険証を渡したところ、買主が事故を起こし、「保険契約者」として売主が警察や保険会社から事情聴取を受けた例も報告されています。
また、保険証に記載された氏名・住所がそのまま残っていたことで、プライバシーの漏洩につながったケースも。たとえ好意でも「そのままでいいですよ」は避けるのが無難です。
まとめ:自賠責保険は名義変更不可。個人売買では原則解約がおすすめ
自動車の個人売買では、自賠責保険は基本的に「譲渡」ではなく「解約」すべきです。保険には名義変更制度がなく、契約者情報がそのまま残るため、後日のトラブルや情報漏洩のリスクがあります。
買主が仮ナンバーでの使用を希望する場合でも、新たに短期の自賠責に加入してもらうよう案内し、売主側では確実に解約するのが安心です。安全でスムーズな取引を行うためにも、保険の取り扱いには慎重さが求められます。
コメント